信長を天下統一の直前までいかせた「異常さ」とは何か。それは家康や井伊直虎とは根本的に違うモノ。 | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

 「織田信長は、どうして天下統一に近づけたのか、他の戦国大名には、どうしてそれができなかったのか」という話をします。

 大河ドラマ、ついに信長が出てきましたね。海老蔵。いやあ、見るからに「異常人」ですね。いい意味でも悪い意味でも。天下を統一しちゃうのは、こういうヤツなんだな、という。

 いっぽうの阿部ダダヲの徳川家康、いまんとこ凡人の極みですね。「三河一国でいいじゃん、浜松とか駿府とか、ムリなこと言わなくてもいいじゃん」と奈々緒の膝枕でボヤく、ヘタレなオヤジです。こいつがなんで最後に天下取ったんだろう、と、いまんとこ思いますよね。

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 でもね、家康のほうが、アタリマエなんです。武士としては。

 そもそも武士は何のために戦うのか。自分の農地と農民を守るためです。自分の領地は他の何にも替え難いオンリーワンのもので、命懸けで守るのだ、自分が死んでも子々孫々に伝えていくのだ。これを「一所懸命」といいます。その目的のために、自分の領地を保証してくれる者をリーダーとして仰ぎ、その指揮下で戦う、これを「御恩と奉公」といいます。これが「武士の世界」の基本ルールであり、鎌倉時代から戦国時代、江戸時代まで、本質は変わりません。

 つまり、戦国大名というのは実は、自分の土地を死んでも守りたいという国人領主たちの連合体に「乗っかった」存在なのです。

 大河ドラマの井伊直虎は、なんのために毎週頑張っているのか? もちろん「井伊谷の領地を守り、そこに住む領民を守るため」です。彼女の「守るべきもの」の中には、領地だけでなく、肉まんくんたち(家来)も、TKO木下たち(領民)も、全部含んでるのは、いうまでないでしょう。
 彼らにとって、領地も領民も、ただの数字ではありません。「倍の領地をやるから、先祖伝来の領地を手放せ」なんて命令は、本来、ありえないんです。

 「天下統一」のために信長がやった多くのことは、この「武士のタブー」に大胆に手を突っ込むことばかりだった、と言っていいでしょう。本拠地を次々に移して京都に近づき、配下の武将を征服地の領主にガンガン配置変えしていく、こんなことは、他の戦国大名には絶対にできません。
 じゃあ、なんで信長にだけはできたのか、ってのは、信長が型破りな人物だったから、海運による商業的収入が多くて「農地にこだわる」発想が薄かったから、奇跡的にいろんな条件が揃ったから、いろんな言い方ができますが、なんにせよ特別なこと、というより「武士の常識から外れた」異常なことだったんです。その異常さからくる「無理」というのが少しづつ溜まっていき、最後に爆発したのが「本能寺」ということになります・

 実力本位の人材登用、なんていいますけど、 「自分の能力で出世しても、死んだあとに息子の能力が劣れば、あっというまに取り上げられる」、そんな主君のもとでは、命懸けで働き続けるのには無理があります。ときどき暴発する家来が出るのは当然です。信長は、武士の土着的マインドというものを無視して驀進した、だからこそ天下を取る直前まで行けたのは事実だけど、だからこそ最後に殺された、ともいえます。

 そして、これが一番重要なことですが、家康がどうして最後に天下を取れたのか。この「武士としてのアタリマエの価値観」を最後まで持ち続け、それを尊重したから「御神輿に乗れた」のです。

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