「ハムレット」を解く(10) フォーティンブラスは何故「最後まで出てこない」のか? | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

 さて、ここまでフォーティンブラスを持ち上げてみせると、「そうかなあ」と思う方も多いであろうと思います。「だって、コイツほとんど出てこないじゃないか。たったの2シーンしか出てこない『端役』が、この劇のキモだといわれてもねえ・・・」。無論、最後の台詞(というより演説)をするというだけで充分に重要人物だ、と主張することもできますが、逆にいえば「これだけのためにいる役」と言われても仕方ありません。
 しかし、フォーテインブラスはハムレットの合わせ鏡であり、彼と対比してハムレットの立場・性格・行動を考えることでしか、この劇の本質を理解することはできない、という主張を、私は決して捨てるつもりはありません。
 したがって、これが「ハムレット」の最後にして最大(?)の謎だ、と私は敢えて宣言します(笑)。「最重要人物であるはずのフォーティンブラスが、なぜほとんど舞台に出てこないのか?」


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 フォーティンブラスは、たとえば「リア王」におけるフランス王と似たポジションといえます。重要な役割をする人物のはずなのに、ワンシーンしか出てこない。下手な役者がやれる端役ではありません。とすれば、シェイクスピアの劇団事情(役者の数がさほど多くない)から考えても、これは「でずっぱりの主役級人物との兼ね役」である可能性が高いのです。というわけで、私は「フランス王は、エドマンドとの兼ね役である」と推理しました(それについてはこのブログの「シェイクスピア→リア王の謎」をご参照ください)。
 では、フォーティンブラスは誰との兼ね役か。ラストシーンに出ていないのは誰か。ポローニアスでしょうか。しかし彼はオズワルドとの兼ね役の可能性が高いです。その根拠は別に一章を設けねばなりませんが、とりあえず、「この時代の上演では、背格好が似ている役同士が兼ね役であることが普通」というセオリーにあてはめ、老人のポローニアスと壮年のフォーテンンブラスの兼ね役はない、と考えておきましょう。
 ローゼンクランツとギルデンスターン。これは妥当な線です。このどちらかがレアティーズとして、もう一人があいています。しかし私は敢えて、最後に出てくる「イングランドからの使者」、つまり「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」という名台詞(?)を述べる役に宛てたいのですよ。シェイクスピアはそういう皮肉というかイタズラを良くやります。これは私の直感のようなものなんですが。
 そこで。もっとビックリな推理を私は提案したいと思うわけです。・・・以下次号。