『今月は残業をたくさんやったのに全然成果が上がらなかった…』と
感じたことはありませんか。
反対に『今月は残業を殆どやっていないのに思ったより成果を上げられたぞ!』
と感じることはどうでしょう。
多分大部分の方が感じたことがあるのではないかと思います。
意外!と思われるかもしれませんが、これは実は必然の結果なのです。
先ほどの「残業をたくさんやったのに」と「残業を殆どやっていないのに」の
『のに』を『から』に変えてみるとどうでしょうか。
『今月は残業をたくさんやったから全然成果が上がらなかった…』
『今月は残業を殆どやっていないから思ったより成果を上げられたぞ!』
不思議ですが、こっちの方がしっくりくると感じる方も多いでしょう。
「そんなこと言ったってうちの会社ではサービス残業は義務になっているんだから
仕方が無いじゃないか」という方もいらっしゃるでしょうが、これを知っているだけ
でも違ってくるかもしれません。
≪長文になります≫
労働時間について、以前ある研究プロジェクトで、分析をしたことがあります。
残業というのはやればやるほど単位時間当たりの能率が落ちるのは想像に難くあり
ませんが実はトータルで見ても仕事量や質は定時間の時と比べて落ちてしまいます。
残業時間中だけ効率が落ちるのではなく、全仕事時間の効率が落ちていきます。
ということは、長い時間仕事をしているのにトータルでの仕事量は逆に下がって
しまいます。つまり成果ベースでみても落ちてしまうことになるのです。
そしてその傾向、残業をしたことによる能率低下の影響は、常に一生懸命仕事を
する人ほど顕著に表われます。
残業が続いても能率が落ちない人は、良く言えば、意識的・無意識を問わず、
普段から残業分も含めて体力・気力を温存し、うまく割り振ることができる人
でしょう。(悪く言えば手を抜いている人??)
もちろん、商談の約束や急なトラブル対応などで優先度の高い仕事の場合は能率が
落ちてしまっても仕方がありません。
【 残業をするとなぜ能率が落ちるのでしょうか 】
人間が1日の中で「集中しようと思って集中できる時間」には限界があります。
集中力が切れた状態で働き続ければ様々な弊害が起こり、結果的に成果を落として
いきます。
仕事の絶対量が多い(通常の処理能力を超えた量)という場合には、残業をすれば
瞬間的な成果はあります。
ところが、この状態を継続すると、思考力の低下や体力の消耗により能率が低下し、
1時間で終わる仕事が2時間3時間かかってしまったり、ミスの増加でその対応ロスも
非常に増えてきます。
通勤に使う体力も通常より消耗しますし、過労による体調のリスクも負わなければ
なりません。
また、忘れがちなのは、仕事場にいるというだけで力(体力・気力)の消耗が
あるということです。ですので長時間仕事場にいればそれだけで通常より
消耗が多くなります。
残業をすれば長時間かけているので表向きは多くの仕事量をこなしていると
錯覚しがちですが、実際の仕事量は減っているはずです。
更に体力・精神力の消耗を回復するのにも普段より何倍もの回復力を
要することになります。
【 なぜ残業は減らないのでしょうか 】
残業が減らない要因として、残業をすることが美徳であるという誤った捉え方を
している人が少なくないことが上げられます。
残業をするというだけで会社に貢献している気分になり、逆に残業をしないことは
悪いことだという風潮があるからです。
特にIT業界などはこうした傾向が強く、「残業になっても仕方が無い」とか
「残業があって当然」などの甘えた考えを持ってしまう人が多いようです。
しかし、残業は会社にとって経費やリスク、成果の低下など、その殆どがマイナスにしか
作用しません。
冷静になれば理解ることも、責任者や管理者など、目先の利益・評価に囚われやすい
地位に就いている人程焦ってしまうのでしょうね。
【 効率的な仕事時間(成果ベース) 】
労働時間は長すぎても短すぎても最大の成果に結びつきません。
1時間あたりの成果は図『仕事密度』から、1日6時間労働が一番高くなるようです。
また、トータルでの成果は図『成果量の変化』から、1日7時間が一番高くなるようです。
(現代社会で実現可能か不可能かは置いておいて、データとして捉えておいてください)
【 労働日数は関係あるのでしょうか 】
上のグラフのように1日の効果的な労働時間が分かっているのなら、合計の労働時間は
そのままにして単純に労働義務日を1日増やしたら効率が上がるのではないか、と考え
られそうです。
しかし実際は、週間で8時間残業した場合と、残業は無しで1日多く働いた場合(どちらも
週の合計労働時間数は同じ)を比べてみると、予想とは反対に、日数が多い方が更に
成果が落ちてしまいます。
このことから、成果を上げるためには労働時間数に加え(あるいは労働時間数以上に)
労働日数も関係してくることが分かります。
ただ、先程とは反対に1日の労働時間数を増やして労働日数を減らすという場合は能率が
上がるケースもあるようです。
【 どうせならやった分の成果が欲しい! 】
経営者的な立場からは、従業員には何とかしてなるべく安い賃金で、なるべくたくさん
働かせたい、という方向にばかり目が行ってしまいがちです。
また、労働者の方も、「今日は残業をたくさんやったからたくさん仕事をしたぞ」と、
仕事をした気になっただけの自己満足に陥ってしまいやすいです。
長時間かけて仕事をするということは、一生懸命やっているつもりでも結局はダラダラと
過ごしているだけになってしまうのです。
本当にクオリティの高い、顧客を満足させられるだけのものを完成させるためにも、
なるべく効果的な仕事方法を見つけてみてください。
長期的な視野で見た場合、200時間の労働をして100時間分の成果しか得られないよりも、
150時間の労働で150時間分の成果を得た方が良いと感じるのは私だけではないと思います。
[ 注記 ]
※ここでは定時を法定の8時間(週40時間÷5日)とし、時間外労働のことを残業と
呼んでいます。
※労働義務時間を比較対象にする必要があるため、業種毎の一般的な労働義務時間・
日数を想定しています。
※祝日の扱いについても業種によって変わってきます。
例えばIT業界なら土日と同じ扱いにして算出しなければなりませんし、飲食業などの
土日がコアタイムになるような業種はその業界に合わせて当てはめる必要があります。
※今回使用した統計のデータは長期間(最低1ヶ月程度以上~)継続した場合のものと
なっていますので、普段定時であがっている人がたまたま残業をしたという場合には
当てはまらない場合があります。
※能力やタイプなどには個人差もありますし、残業の程度や職種・仕事内容によっても
違います。
実際には給与額など他の事情も加味する必要がありますので、必ず全員が同じように
当てはまるというわけではありません。