キルリアン・ブルー [ 矢崎ありみ ] |
名前だけは知っていたけど、初めて読む作家さん…2014年発刊のTO文庫だが、もともとは2011年に角川書店(現KADOKAWA)より単行本で出ていた作品だそうだ。特に、改訂等の言及はなし。何者かに誘拐された女子高生が、目隠しされた状態で、無理やり死体を触らされるという展開から始まる。実はその女子高生には、死体(遺体)に触るとその人の死の瞬間の記憶などを読み取るという特殊能力があったのだ。ただし、本人はその能力を自覚していたわけではなく…事件に巻き込まれたことで、どんどんと能力を覚醒させていく。さらに、誘拐直前には女子高生の父親が失踪、拉致の解放直後からいくつもの殺人事件に巻き込まれ、能力を使って父親の行方や殺人事件の真相を探ろうとする。設定自体は漫画チックなオカルト要素だが(今年の1月に読んだ「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」のノベライズにも似ていた、ちなみにまだ映画は見てない)…淡々としたドライな文体が、嘘くささをうまく緩和。主人公の女子高生につきまとう陰鬱な死の臭いが漂ってくるようで、しっかりとミステリアスな物語、サスペンスフルな展開を味わえる。最初は女子高生の特殊能力に半信半疑ながら、一番の理解者、協力者になっていく若手刑事との関係なんかも…ベタベタしすぎない距離感で、中途半端なラブコメになるような失敗はしていない。表紙イラストで、ラノベ的なものを想像していたが、ちゃんとミステリーとして楽しめた。ただ、犯人は予想通りだったし、中盤までの盛り上がりに対して、種明かしに入ってからが、少々、物足りなかった。