凶悪 感想/山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴の熱演を堪能!見応えある社会派作品 | 映画時光 eigajikou

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世界の色々な国の映画を観るのがライフワーク。
がんサバイバー。
浜松シネマイーラの会報にイラスト&コラム連載中。
今は主にTwitterとFilmarksに投稿しています(eigajikou)

『凶悪』
日本映画 2013年製作
TOHOシネマズ浜松で鑑賞

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↓予告動画はこちら


監督:白石和彌

出演:山田孝之   藤井修一
    ピエール瀧 須藤順次
    リリー・フランキー 木村文雄(先生)
    池脇千鶴  藤井洋子
    白川和子  牛場百合枝
    吉村実子  藤井和子
    小林且弥  五十嵐邦之
    斉藤悠   日野佳政
    米村亮太朗 佐々木賢一
    松岡依都美 遠野静江
    ジジ・ぶぅ 牛場悟
    村岡希美  芝川理恵
    外波山文明 森田幸司
    廣末哲万  牛場利明
    九十九一  福森孝
    原扶貴子  牛場恵美子

見応えは保証します!



死刑囚の告発をもとに、
雑誌ジャーナリストが
未解決の殺人事件を暴いていく過程をつづった
ベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」
(新潮45編集部編)を映画化。
取材のため東京拘置所で
ヤクザの死刑囚・須藤と面会した雑誌ジャーナリストの藤井は、
須藤が死刑判決を受けた事件のほかに、
3つの殺人に関与しており、
そのすべてに「先生」と呼ばれる首謀者がいるという告白を受ける。
須藤は「先生」がのうのうと生きていることが許せず、
藤井に「先生」の存在を記事にして世に暴くよう依頼。
藤井が調査を進めると、やがて恐るべき凶悪事件の真相が明らかになっていく。
ジャーナリストとしての使命感と狂気の間で揺れ動く藤井役を山田孝之、
死刑囚・須藤をピエール瀧が演じ、
「先生」役でリリー・フランキーが初の悪役に挑む。
故・若松孝二監督に師事した白石和彌がメガホンをとった。
(映画.COMより)

凶悪―ある死刑囚の告発 (新潮文庫)/「新潮45」編集部


この映画はどなたにもぜひとおススメはしませんが、
『冷たい熱帯魚』をご覧になった方にはぜひ見比べて戴きたいです。
現実にあった事件をモデルにしていますが、
切り口が違います。
『冷たい熱帯魚』は、園子温監督と高橋ヨシキ氏の共同脚本だからか、
園子温監督の文学青年的なこだわりが
弱くなっていている所が気に入っています。
でも、結局は道徳的な収斂に向かってしまったのが惜しいなあと思っています。
せっかくアンモラルな題材を描いたのだから、
もっと概念的には過激な解釈を期待していました。
冷たい熱帯魚 [DVD]/吹越満,でんでん,黒沢あすか


『凶悪』も人間の狂気や本性について深く洞察されていますので、
とても考えさせられる作品です。
しかもセリフや映像で安易な答えや解釈などを提示せず、
映像表現で語っています。
観客にテーマと対峙させる作品なので、
なんでも分かりやすく教えてくれる作品が好みの方にはおススメしません。
私は観ていて田中登監督の『人妻集団暴行致死事件』を連想しました。
パンフを読んだら監督は田中登監督のロマンポルノ作品を
意識しているようです。

3週間のタイトな撮影期間で撮りあげたので、
特に主演の山田孝之は大変だったようです。
(栄養ドリンクを1日5本飲んだりしたそうΣ(゚д゚;))
どんどん取材にのめり込んでいく
雑誌記者藤井を、入魂の演技、集中力で造形しました。
素晴らしいです合格
藤井を正義感たっぷりな紋切り型の熱血ジャーナリストでなく、
正義感が暴走して狂気に陥っていく様子の
なまなましさは見ていてゾッとしました。
家庭人としては優柔不断な困った夫ぶりも上手く表現。
これは主演男優賞をあげたいですね。

あまちゃんで寡黙な鮨屋の大将を演じているピエール瀧が、
この映画では一転、凶悪犯罪の実行犯
元ヤクザの死刑囚須藤を演じています。
人間的には一見単純そうに見えながら、
複雑なキャラクターです。
精神的な変遷も大きく、様々な顔を次々と展開してくれます。
これも難しい役をピエール瀧が熱演しています合格
ヤクザ時代の強面なときより、
死刑囚になってキリスト教に入信し、
穏やかに見える演技の方が却ってコワイですョガーン

リリー・フランキーはどんどん上手くなっていますね。
この映画での「先生」というキャラクターは、
これまた、相当複雑な人物造形が必要な役です。
ヤクザの須藤と違い、
見た目は一般人で、普通の家庭人の顔もある。
でも裏の顔でやっていることが狂っている。
どんどんエスカレートしていく様子の説得力もあります。
それが大芝居に見えないのがとても良いです。
リリー・フランキー自身の個性も含め役柄に活かされています。
キャスティングがぴったりはまりました合格

藤井記者の妻、池脇千鶴も、
出番は少ないながら、とても印象的です。
彼女は認知症になって手のかかる夫の母親の世話をしています。
かなり疲れて参っていることを夫に必死で訴えても
夫は仕事に夢中で、とりあってくれません。
一番普通に見える彼女が人間の心理の罪深い部分を無感情に表現した、
最後の方の夫と対峙するシーンは怖かったです。
原作者も自分の当時の心境の深い部分を彼女のセリフで指摘され、
ドキッとしたというシーンは大きな見所です。

脇を固めているのは、
実力のある舞台俳優などが多く、
この作品の世界観をリアルに表現しています。
保険金殺人される老人役のジジ・ぶぅは壮絶。
酒を大量に飲まされる場面はスゴイ迫力ですが、
実際4リットルも水を飲まされてそうです。
リリー・フランキーが
「ジジ・ぶぅはアカデミーぶっこみ賞ぐらいは
貰っていいと思います。」と語っています。


陰惨な犯罪が行われた場所と雰囲気にとても現実感があります。
ロケハン、美術、撮影がとても上手く組み合わさって表現されています。

この映画をご覧になったら、
ぜひ、パンフレットを読んでみて下さい。
よくある太鼓持ち的なレビューなどは載っていません。
キャストや監督、原作者のインタビューがとても興味深いです。
コラムも読み応えがありました。
中でも黒住光氏の書いたコラムを読んで、
これ、自分が今思っていることをズバリ書いてくれているなあと思いました。

一部を紹介します。↓

{「共感できませんでした」という言葉で
映画を切って捨てる人たちが増えている。
まさか、極悪非道な殺人犯を描いた『凶悪』
をわざわざ見に来ておいてまで、そんなことを言う輩は……
いや、やっぱりいるのだろう。
この映画では山田孝之演じる藤井という雑誌記者が、
一般人代表的なポジションに置かれている。
彼はこの映画を見る観客の矢面に立たされるだろう。そして、
「なぜ家庭を犠牲にしてまで事件を追うのか。
苦しんでいる奥さんをどうして放っておくのか。
まったく共感できませんでした。」
と否定されるに違いない。
 批判ではなく否定。批評ではなくクレーム。
現代の映画館は悪所ではなくショッピングモールの中にある。
未知の世界や人外魔境に踏み込むために
場末の怪しげな木戸をくぐるのではなく、
平和なファミリーが集う明るい建物の中で、
あらかじめ想定された通りのサービスを受けるため、
スペック通りの商品をゲットするためにチケット代金は支払われる。
消費者の時代である。
商品と対価の問に適正価格なる真実が存在するという
根拠のないファンタジーを信じ、
それを求めるのが正義だと信じる消費者が、
成果や見返りのあてもなく事件を追わずにいられない
冒険者である藤井の心境に共感できるはずもない。}


私はいい大人が、
「何が言いたいのか分からない」
「何を伝えたいのか分からない」
と、言ったり書いたりして平気なのが不思議です。
映画に限らず表現というものは、
表現者が伝えたいものがあるから表現している訳です。
それを見たり、読んだり、聞いたりするからには、
表現者の意図を捉えること、伝えたいことを感じ考えることで、
その表現、作品と向き合う訳です。
そんなに簡単に「分からない」と、
考えることを放棄してしまったことを告白するのは、
恥ずかしくないのかな。

まあ、自信満々に持論を展開していて、
その自信はどこから来ているのでしょう。
と思うこともままあります。
歳を取って、経験や知識も増えたはずなのに、
自分はどんどん自信などなくなっているので。

こんなことを書くことで読者の皆さんの
気分を害することになるかもしれません。
自信がないなどと言いながら、
ここは自分の意見をちゃんと書きたいという、
ポイントは押さえて記事を書いていますのでネ。
エラそうなことを書いて恐縮です。

白石和彌監督は若松孝二監督の作品に参加してきました。
(行定勲監督、犬童一心監督作品にも参加)
若松孝二監督は、若いスタッフや俳優を育てることに
力を入れてみえました。
そこで学んだ若い才能がこうして力強い作品を発表し、
若松監督の「若い人を育てる」という姿勢の
影響力を改めて思い知ることとなりました。

また、少し脱線になりますが『凶悪』を観ていて連想したのは、
『人妻集団暴行致死事件』
『冷たい熱帯魚』
そして、ベネット・ミラー監督の
著書「冷血」の取材にのめり込んでいく、
作家のトルーマン・カポーティを描いた
『カポーティ』です。
カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]/
クリフトン・コリンズJr.,キャサリン・キーナー,フィリップ・シーモア・ホフマン

冷血 (新潮文庫)/トルーマン カポーティ


フィリップ・シーモア・ホフマンがアカデミー賞主演男優賞を受賞。
作品賞・監督賞・脚色賞でもノミネート。
助演女優賞ノミネートのキャサリン・キーナーは、
カポーティの幼馴染で作家ハーパー・リー(「アラバマ物語」)
を演じました。
このときの取材相手の犯人ペリー・スミス
役はクリフトン・コリンズJr.で、
最近は『パシフィック・リム』で、
エンジニアのテンドーを演じていました。
フィリップ・シーモア・ホフマンとキャサリン・キーナーは、
昨日観た『25年目の弦楽四重奏』では夫婦役でした。
ベネット・ミラー監督作品は他に
『マネーボール』が日本公開されました。
マネーボール [DVD]/
ブラッド・ピット,ジョナ・ヒル,フィリップ・シーモア・ホフマン

ベネット・ミラー監督の弟セオドールの妻はモデルの安美佳です。↓
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また、ベネット・ミラー監督の新作は、
チャニング・テイタム出演の新作映画紹介の記事↓
マジック・マイクのチャニング・テイタム、ウォシャウスキー姉弟新作
ジュピター・アセンディング撮影中
←クリックで記事へ
にも書きました。
もしかしたら来年のアカデミー賞に絡んでくるかもの、
アメリカで11月20日に公開の
「Foxcatcher フォックスキャッチャー(原題)」
オリンピックの金メダリストで世界チャンピオンのレスラー、
デーブ・シュルツが、アメリカの大手化学会社デュポン創業一族の跡取りで、
統合失調症のジョン・E・デュポンにより射殺された事件について、
デーブの弟で同じくオリンピック金メダリストのレスラー、
マーク・シュルツが記した手記がもとになっています。
デュポンはモントリオール・オリンピック(1976年)で
五種競技のマネージャーを務め、
アトランタ・オリンピックに向けてレスリング・チームを作っていました。
自身が運営するペンシルバニア州にあるレスリングのトレーニング用施設
フォックスキャッチャーで1996年1月にデーブを殺害して逮捕され、
有罪判決を受け獄中死しました。
マーク・ラファロがレスラーのデーブ、
スティーヴ・カレルがデュポン、
シエナ・ミラーがデーブの妻、
チャニング・テイタムはデーブの弟マークを演じます。↓

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この映画はまだトレーラーもユーチューブにUPされていません。
撮影の様子の写真を集めたものがありました↓


今週末は映画を9月20日2本、21日3本、22日2本と観に行って、
今日も2本観る予定。
ブログ記事が全然追いつきません(;´▽`A``

脱線が長くなりましたが、
『凶悪』は残虐な殺人・死体損壊描写や濡れ場もあり、
R-18にもなりかねないところ、
編集を工夫してR-15にしたという感じもします。
今年の私の日本映画ベストテンに入る作品です。
見応えは保証します。
目年増な娘も観ました。70年代の映画のテイストを感じたと言っています。


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25歳衝撃の才能ビックリマーク
渡部亮平監督応援していますビックリマーク
ぜひ、お近くの映画館にリクエストして下さいビックリマーク
仙台桜井薬局セントラルホール11月23日~29日公開決定

「かしこい狗は、吠えずに笑う」公式HP

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