現代の戦争の実態。


『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
イギリス軍諜報部のキャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)は、ロンドンに居つつ、アメリカ軍との合同作戦の指揮を執っていた。
偵察用ドローンの映像を元に、ケニア・ナイロビに潜伏するテロリストを調査しているのだ。
その情報から、大物のテロリストが大規模な自爆テロを目論んでいることが判明。
ただちにドローンのパイロットに、潜伏先の家屋へ向けてのミサイル発射を命令。
しかし、殺傷圏内に一般人の少女がいることが判明し‥‥。

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監督は、「エンダーのゲーム」などのギャヴィン・フッドです。

現代の戦争の「冷たさ」が、これでもかと伝わってくる映画でした。
戦争って恐ろしいなと。
常識を持った大人の価値観を、歪ませてしまうのですから。

「他の大勢の命を救うため」
という片側の大義が
なんの罪もない一人の少女の命を奪う行為を、小事にしてしまうのです。

ナイロビに潜伏するテロリスト。
無人のドローンが上空高くから監視し
さらには雇われた現地の人間が、小型カメラや盗聴器で詳しく調査を。

指示を出すのは、遠く離れたイギリスにある司令室。
撃つかどうかの判断は会議で決定するわけですが
会議の相手もまた、遠く離れたアメリカにいて。

凶悪なテロリストのまわりには、日々を正しく一生懸命生きてる人がたくさんいるのです。
その空気が、映像で見てるだけ、電話で聞いてるだけの人間に、どこまで伝わっているのだろうか。

パウエル大佐は、何の躊躇もなく「チャンスだ。撃とう」と。
女の子の命が危険だと分かっているのに。
何が恐ろしいかって、それを心の底から「正義のため」と思っているところで。

しかし、会議にはもちろん反対派も。
そこには、もちろん良識的な意味での判断もありますが
なるべくこちら側が世間の非難を浴びたくないという、世論上の不利を回避したいという意図の方が強くて。

議題がもはや、無垢な少女の命を飛び越えちゃってるわけですよね。
誰かのために犠牲にしていい命なんてないのに。
その大前提を忘れさせる恐ろしさ。それが戦争。

命のやり取りの現場の指示を
エアコンの効いた会議室で、コーヒーを飲みながら行っているなんて。

それが今の現実。
でも、それによって救われている命があるというのも現実。

何にも関わってない僕が、偉そうに言うのはアレなんですけど
こういうやり方だと、また新たな怨恨を生むだけな気がしますね。
もちろん、だからって黙って見ててもやられっぱなしになるんでしょうけど。

ああ嫌だ。戦争嫌だ。
戦争が生み出す悲劇が伝わってくる映画でした。


☆個人的見どころ
 ・ヘレン・ミレンの軍人っぷり
 ・虫型カメラ!
 ・そしてミサイルは‥‥