「キツツキと雨」の沖田修一監督作品。


『横道世之介』

1987年。長崎出身の横道世之介(高良健吾)は、大学入学のために上京。

田舎者丸出しの彼は、バブル真っ盛りの東京で浮きまくっていた。

しかし、人を疑うことを知らず、偏見もなく、純朴で人なつっこい彼に、周囲も次第に心を開き出す。

そしてついには、彼に想いを寄せるお嬢様まで現れて‥‥。


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「悪人」の吉田修一さんの小説だそうで。

あっちはドロドロ。こっちはポカポカ。

全然違う!


なんとも変な映画でした。

横道世之介という、名前意外は特に何の変哲もない男の学生時代を、ただ追っているだけで。

当時の彼と絡んだ人間たちが、十数年経って、彼のことをふと思い出し、クククと笑うという。

それだけの映画なんです。

でも、不思議です。

何だかとても面白かったんです。


僕は結構、バチッとオチが決まったり、キチッと主張が伝わるような映画が好きなんですけど。

そのどっちでもないっちゃあなくて。

それでもグッと引きつけられたのは、やはり横道世之介という男のキャラクターなんでしょうね。


社交辞令というものを知らず。

良く言えばスレてない男だけど、悪く言うと空気が読めない。

でも、そこに悪気は一切なく。

不器用で友達に迷惑もかけるが、彼らの頼みも断らない。

いつも汗だくで、いつもニコニコ。

そんな横道世之介に、高良健吾さんがバッチリとハマッていました。


浮世離れしたお嬢様・祥子(吉高由里子)のやり取りも愉快で。

遊び人な女性に言われる、社交辞令的なセリフは信じるのに、お嬢様の遠回しな感情表現には気付かないというのも、世之介らしくて。
気付けば、世之介の行動が気になって仕方のない自分がいました。


とはいえ、さすがに2時間40分は長かったですよ。

そこまで劇的な展開が、いくつも待っていうわけではないですし。

個人的には、もうちょいコンパクトにスキッと観たかったです。


学生時代の、くだらなくも懐かしい思い出たち。

それを思い返すたびに、浮かんでくる彼の笑顔。

そういえばあいつ、今はどこで何をやってるんやろう?

あいつ、アホやったな~。ぷぷぷ。

そう思えるような友達がいたら、それは幸せなことなんですな。

と、改めて気付かされました。


さて、世之介君は、いまどこで何をしてるんでしょうか。

気になった方は映画館へ‥‥。

☆個人的見どころ

 ・横道世之介

 ・作家志望のあんちゃん

 ・メイドのおばちゃん