ある家族の物語。


『東京家族』

瀬戸内海の小さな島で暮らす周吉(橋爪功)ととみこ(吉行和子)は、子供たちに会うため上京。

長男・幸一(西村雅彦)は開業医、長女・滋子(中嶋朋子)は美容院経営、末っ子の昌次(妻夫木聡)は舞台美術の仕事で、それぞれ東京で暮らしていた。

久しぶりの家族団欒も束の間、忙しい日々を送る兄妹は、両親の面倒を嫌がり、半ば追い出すように2人を高級ホテルへ。

ちょうどその頃、元気に見えたとみこに、ちょっとした体調の変化が‥‥。


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泣けますなあ。

泣きました。

ボロボロとは泣かないですけど。

ホロリ。またホロリと涙がこぼれてくるような。

多分ですけど、若い子が観たら、子供が観たらつまらない映画でしょうけど。

でも、僕のように、ある程度年齢を重ねた人間には、胸にグッと来るものがあると思いますよ。


離れて暮らす両親。

年老いていく姿。

子供の頃の思い出。

親孝行とは。

大人ならば、リンクするところが少なからずあるでしょうよ。


田舎に暮らす両親と、東京で暮らす子供たちとの距離感が、絶妙に描かれていました。

子供からしたら良い距離を保っていると思っていても、両親からしたら遠く遠く。

両親には感謝しているし、大事にしているつもりやけれども。

いざ上京して来られると、自分たちの日常が優先で

「お父さんたち、いつまでいるのかしら?」なんて。

親孝行という名目で、手のかからない、少し離れた高級ホテルへ送り込んだり。

親はそんなことを望んでないのに!

なんちゅうひどい子供たちや!

と思いつつも、自分ならそんな行動を取らないと、心から言える人が、どれくらいいるのだろうか。


橋爪功さんと吉行和子さんの老夫婦が素晴らしくて。

本当に50年ばかし連れ添ったんじゃないかと錯覚するほどの空気感でした。

頑固で無愛想な父。

そんな父に呆れながらも、微笑んで後ろをついて行く母。

その姿を見ているだけでも、なんだか涙が‥‥。


そして昌次の彼女役の蒼井優さん。

これがまた素晴らしかったです。

かわいいのはもちろんですけど。

作品のキーマン(キーウーマン?)でしたよ。

彼氏の両親との出会いにドギマギする様から、母と打ち解けたり、父に萎縮したり。

そんなごく普通の、今どきいそうでいなさそうな素直な女子を好演しておられました。

こんな嫁もうたら最高やな!

こんな娘が息子の嫁に来たら最高やな!

そういうことです。


しかし、この作品の大事なシーンを(屋上で橋爪功さんと妻夫木聡さんがしゃべるシーン)、予告編で使うって何事だ!?

あそこは伏せといてもらって、劇場で初見が良かったなあ。

監督さんのチョイスなのか?

う~ん。


寅さんシリーズでお馴染み、山田洋次監督が、小津安二郎監督の「東京物語」をモチーフに撮られたそうです。

ああ‥‥そんなこと知らなかったよ‥‥観てないよ「東京物語」‥‥。

その辺に、自分の浅さを感じてしまうなあ。

もっと過去の名作も観なければ。



☆個人的見どころ

 ・昭和の夫婦

 ・親子の距離感

 ・腕時計