親の介護が心配な30代 | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

親の介護が心配な30代

親の介護が心配な30代

数年前から、20~30代向けの雑誌の取材で「親が介護状態になったときのアドバイス」を求められることが増えてきた。「親の介護に備える」というテーマで1ページないし2ページの企画で、仕事を辞めて面倒を見なくてはいけないのだろうか、介護費用を貯める目安はいくらかといったことに対する答えが知りたいと言う。

はじめて質問されたときは、担当編集者が過度の心配性だから立てた企画なのかと思ったのだが、その後も他誌から取材依頼が続いたのでどうやら個別要因によるものではない。なぜこのテーマが続くのか考えてみたら、30代の編集者が担当するページのときに出てくる企画だということに気が付いた。

今の30代は「不安世代」。就職氷河期のなか苦労して社会人になり、長引く不況と構造の変化により給料はほとんど上がらず、預貯金の金利はずっとほぼゼロが続いている。いい思いをしていないから、将来に対する不安はバブルを経験している上の世代より敏感なのである。

親が介護状態になったら仕事を辞めるべきかどうか…という質問には「辞めてはいけない。自分の生活が成り立たなくなるから」と答える。
親の介護費用はいくら貯めるといい?…「公的介護保険を活用しながら、自己負担分は親自身のお金で賄うのが原則」

それぞれの家族の事情で対応が異なることがあるかもしれないが、通常はこのように考えればいい。答えはいたってシンプルなので、「親の介護の心配に2ページも割くことはないのでは?」と投げかけてみると、30代の編集者は「公的介護保険について解説したり、親のお金が足りなくなったときのことをアドバイスすると、やっぱり2ページ必要なんですよ」と言う。ふーん、せっかくのお金の特集なら、他に取り上げるべきテーマはいっぱいあるのに…と思うが、心の中のつぶやきにとどめるようにしている。
ちなみにバブルを経験している40代、50代は、「親の介護のことは、そうなったときに考える」と30代とは対照的なのが興味深い。

そもそも親が必ず要介護状態になるとは限らないし、なったとしても80歳以降である可能性が高い。厚生労働省の「介護給付費実態調査の概況(平成22年11月審査分)」によると、公的介護保険の受給者の割合は、74歳以下は5%に届かず、75~79歳で10.5%、80~84歳で22.5%、85~89歳は40.9%。この数字は介護予防(要支援1と2)を含むもので、日常生活で多くのサポートが必要になる要介護3~5に限ってみると、75~79歳で3.8%、80~84歳で8.2%、85~89歳は16.5%とぐっと減る。

実際、周囲を見渡してみても「最近、親の介護が発生して」というのは、50代後半から60代の人だ。30代がさまざまな不安ごとに備える手だてを知っておきたいのは理解できるが、30代が近い将来、親の介護で大変な思いをする可能性は低い。準備する時間はたくさんあるし、親の介護が発生する前に乗り越えるべき自分自身のライフイベントが満載であることを覚えておこう。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20120201/297966/?top_f2&rt=nocnt