介護保険は給付抑制と効率化に切り込め | 辻川泰史オフィシャルブログ「毎日が一期一会」Powered by Ameba

介護保険は給付抑制と効率化に切り込め

厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会が意見書をまとめた。民主党の医療・介護ワーキングチームも先に原案をまとめているが、どちらも膨張する介護費への切り込みが足りない。

 審議会は両論併記ではあるが、介護サービスの必要性が低い人の自己負担を増やすことや介護計画作成の有料化などは先送りし、大企業とその従業員に負担増を求める方向だ。

 年末までに結論を急がなければならないのは、来春の介護報酬改定に関係する介護職員処遇改善交付金の扱いだ。今年度末で期限が切れる。働く人の処遇改善は大切だが、事実上、赤字国債で手当てしている現状は改めるべきだ。介護施設などの収益は改善している。介護報酬の引き上げよりも、事業者の経営努力で対処すべきではないか。

 介護保険制度改革は、来年の通常国会へ提出する法案に何を盛り込むかが焦点になる。自己負担も含めた介護保険の総費用は2000年度の3.6兆円から11年度当初予算では8.3兆円になった。こんな状態では消費税を上げても制度を持続させられない。まずは、徹底した効率化が必要だ。

 軽度者の利用が多い生活援助サービスは、掃除や買い物の手伝いなどが大半だ。こうしたサービスは保険の対象からはずすべきだ。すぐに無理なら将来の廃止を前提に、軽度者の自己負担を1割から2割に上げ利用の抑制を図る必要がある。一定の所得がある人の利用料も上げていい。介護計画作成も有料にして、利用者にコスト意識を持ってもらう必要がある。

 一方で、政府が打ち出した40~64歳の保険料の「総報酬割」は、高所得とはいえ原則として受益のない現役世代の負担を一方的に引き上げるもので賛成できない。

 今の仕組みは、健康保険の加入者の人数に応じて均等に保険料を各組合に割り当てる。これを収入に応じて割り当て、高所得の人が多い組合の拠出を増やす。これまでの方式に比べて中小企業が多い協会けんぽの負担は、労使あわせて1人当たり月900円減り、逆に大手企業などの健保組合の負担は月900円増える。

 国が財政基盤の弱い協会けんぽを助けるために出している国庫補助金1300億円を、大企業などに肩代わりさせるものといえる。取りやすいところから取る、安易な考えと言わざるを得ない。


http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE1E4EBEBE0EAEAE2E2E6E3E0E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D