E.W.サイード「裏切られた民主主義」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「おそらく裕福で強力な共和国が、ほんの一握りの人間たちの秘密結社によってハイジャックされ(かられはみな選挙で選ばれたわけではなく、したがって民衆の力の圧力には感応しない)、あっさりと転覆されてしまった」と、サイードは現政権が一種のクーデターであると主張する。もともとブッシュ大統領は選出手続きそのものに問題が残り、獲得投票数は有権者の25%程度しかなかったのだが、そのような人物が、9.11後の非常事態によって違憲といわれるような大権を議会から与えられているのだ。これにとりついて実際を操っている少数の『カバル』(ユダヤ教神秘主義(カバラ)からきた言葉)とは、もちろん親イスラエルのネオコン集団のことである。これがブッシュの選挙基盤であるキリスト教原理主義勢力や政府系シンクタンクと結びついて、共和党の伝統的な国内優先主義とは大きく異なる超タカ派の対外干渉政策を推し進めている。危機に瀕していた国内経済は、戦争経済への移行で責任がごまかされようとしている。」

 

「これに荷担して、国民を欺いてきたのがメディアである。今回のイラク攻撃ではアメリカ国内で流される報道が海外版とは大きく違っていることが指摘された。出演者は軍関係者ばかりになり、反対意見は姿を期した。これほど簡単に主要メディアが統制されるようになったのは、合併買収による寡占の進展によって、株価に響くような報道ができなくなったためであり、本当に重要な情報が流れるのは一部のラジオやインディー系出版だけといわれている。だが、FCC(連邦通信委員会)はメディアの所有規制(一元化を防ぐための株式保有制限)をさらに緩和することを検討中だ。適切な情報も与えられず、金権選挙や圧力団体によって骨抜きにされた代議制のもとでアメリカ国民が享受している「民主主義」は、はたして他国民に『教えてやる』ようなものだろうか。」

 

 

十数年前のアメリカの話であるが、安部に追従するマスコミ、わけのわからない「日本会議」による政治への口出しなど、同じようなことがいま日本で起きている。