相続人が複数いる場合において、遺産である不動産(収益物件)から相続開始後発生する賃料の帰属について、判例(最高裁平成17年9月8日判決)は、遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当であると判示しています。

 

 

つまり、相続人が3名いたとして(法定相続分は等しく3分の1づつとします)、相続発生から遺産分割までの間に300万円の賃料が発生していたとすると、各100万円づつの賃料債権を取得します。

 

 

この点、仮に相続人の一人が遺産である当該収益物件である不動産を単独取得するという遺産分割が成立した場合、遺産分割の効力が相続開始時まで訴求することを定めた民法909条本文に従うと、その法定果実である賃料についても遡ってすべて(300万円)を当該相続人が単独で取得することになるのかが問題となります。

 

民法

(遺産の分割の効力)
第909条 
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

前記判例は、遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきであるとして、不動産を単独取得するという遺産分割が成立したとしても、それまでに発生した賃料については法定相続分とおり取得するという結論に影響はないとしています。