弁護士江木大輔のブログ

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報道でもされましたが,強制わいせつ,強姦により有罪とされた男性(被告人)について,被害を述べた少女や目撃者とされたその兄らの供述が虚偽であったとして再審により無罪を言い渡された事案(大阪地裁平成27年10月16日判決)が判例時報2316号により紹介されています。

 

 

本件は被告人が同居していた養女であった少女に対する11歳の時の強制わいせつ,14歳の時の強姦の罪について,最高裁まで争ったものの有罪とされたというものです。

 

 

再審において,少女が虚偽供述をした理由や経緯として認められたところでは,少女が被告人からお尻を触られるという話を親族にしたところ,実母らに伝わり「他にも何かされたのではないか」ということで問い詰められ,被害を述べざるを得なくなり,何回も強姦されたということを述べるに至り,引っ込みがつかなくなったということです。少女の兄についても,実母らから「見たんだろう」と問い詰められて話を合わせざるを得なくなったとされています(再審段階における少女の供述)。

 

 

一審が有罪判決が出された後,少女は供述が嘘であったということを実母らに打ち明けたらしいのですが,そうすると偽証罪に問われる恐れもあるから黙っておこうということになり真実は伏せられたまま被告人は有罪となり,その後,少女と実母らが疎遠となったことから真実を述べる気持ちとなり,弁護人に連絡して真実を打ち明けたという経緯だということです。

 

 

本件でさらに決定的な証拠としては,少女が強姦の被害を受けたとされた後に受信した病院で「処女膜が破れていない」とするカルテがあったことです。

何回も強姦されたということなのに処女膜が破れていないというのは客観的に符合しないということが再審無罪の決定だとなったものと思われます。

なお,一審の際に,少女の実母は少女を病院に連れて行ったという供述をしていましたが,カルテについては証拠調べがされていなかったということです。

その時なぜ裁判所は調べなかったんだというのは確かにその通りだとは思いますが,むしろ問題なのは,検察官が実母の供述に基づいてカルテの裏付けも取っていなかったことのように思われます。弁護人が病院に対して問い合わせても答えてくれるはずはないし,「処女膜についてどのような記載があるのか確認する必要があるから証拠を取り寄せよ」という請求を裁判所に求めるところまでは酷のように思いますし,仮に請求したとしても裁判所は「不必要」として却下したのではないかとも思われます。

 

 

要するに,確定判決では,少女やその兄が「嘘をつくはずがない」と頭から決めつけて判断しており,再審においては確定判決における少女らの供述の信用性について「よくよく考えたら不合理だね」という感じで批判しているのですが,後付けであればいくらでもいえると思います。

被害者とされる人が「嘘をつくはずはない」ということでその供述が信用できるという判断手法は珍しくもなんともないほどまかり通っており,本件ではたまたま発覚しただけで全くの僥倖であったとしか言えないのではないかというのが実感です。

 

 

 

 

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