http://www.yomiuri.co.jp/national/20161110-OYT1T50094.html

 

大阪市東住吉区の長居公園で2012年8月、落雷に遭って死亡した岩永牧子さん(当時22歳)の両親(北九州市)が、イベント運営会社2社に約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は10日、請求を退けた1審・大阪地裁判決を支持し、両親の控訴を棄却した。池田光宏裁判長は「落雷発生が具体的に予見可能となってからわずか十数分後の事故で、避難誘導などは難しかった」と指摘した。(11月10日読売新聞オンラインから引用)

 

落雷事故の訴訟としては最高裁の判決があり(平成18年3月13日判決),この件では高校のサッカー部の試合中に落雷で後遺障害を負った生徒側が高校を訴えたところ,二審までは担当教諭らには落雷の予見可能性がないという理由で敗訴したものの,最高裁において予見可能性がはあったとしたうえで,どのような危険回避措置を取ることが可能であったかどうかについて審理を尽くさせるために差し戻しとなり,差戻し後の高裁判決において生徒側の請求が一部認容される結果となっています。

 

 

記事を見る限りでは,裁判所としては落雷の予見可能性はあったとしたものの,その後危険回避のための行動を取ることは難しかったと判断しているようです。

 

 

具体的には判決文を当たってみなければよく分かりませんが,高校サッカー部の事案との比較でいえば,高校生の部活では教諭と生徒との関係性や落雷の危険性を予見できたのであれば試合を中断したりグラウンドから退避させるなどいった危険回避行動を取ることは容易であったと考えられるのに対し,今回の件では人気グループのコンサートでごった返す会場において,被害者が成人女性であり,主催者と観客という関係性などを踏まえると,主催者側として避難行動をすることは困難であった,取ったしても被害を防げたとまではいえなかったと判断されたという可能性があると思います。