労働判例1113号で紹介された事例です(一審仙台地裁平成24年1月25日判決 控訴審仙台高裁平成25年2月13日判決)。




警備員などの仮眠時間が労働時間に該当し、賃金の支払い対象となるかどうかについて、「労働時間」とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいい、「実作業に従事していない時間(不活動時間)が労働時間に該当するかどうかは、不活動時間において仕様車の指揮命令下に置かれていたと評価できるかどうかにより客観的に定まる」ものとされ(三菱重工長崎造船所事件最高裁判決)、仮眠・休憩時間が労働時間に該当するかどうかは、「単に労働契約書の記載のみから直ちに決せられるものではなく、また、仮眠・休憩時間において労働者が実作業に従事しているか否かのみによって決せられるものでもなく、労働からの解放が権利として保障されているかどうかによって判断されるべきである」「緊急の場合に実作業に従事することが義務付けられている場合には、実作業に従事する必要が生じることが皆無に等しいなど、実質的には作業への従事が義務付けられていないなどの特段の事情がない限り労働時間に当たる」ものとされています(大星ビル管理事件最高裁判決)。

また、他の従業員が業務に従事していて仮眠・休憩時間中に実作業に従事することが皆無に等しいなど、実作業への従事が義務付けられていないと認められるような事情があるときは、労働者は仕様車の指揮命令下に置かれているとは評価できないとする最高裁の判決があります(大林ファシリティーズ事件判決)。




本件は、病院に派遣されていた警備員の事案で、ざっくり言うと、夜間などにおいて、4名の警備員のうち2名が実作業に従事し、残りの2名は仮眠していたというものです。




病院との間の業務に関する契約書では、4名以上を常時配置することが求められており、仮眠中であっても、業務中の2名の警備員の対応で不足がある場合には適宜業務に従事する必要があるというものでした。




一審判決では、このような病院側との契約内容からすると、仮眠・休憩時間に病院の敷地内から出ることはできず、宿直室の一角に設けられていた部屋で仮眠を取っており、仮眠・休憩時間中に何らかの突発的な業務が起こった場合に2名の警備員では対応できない場合には、仮眠・休憩中の警備員も対応しなければならず、労働時間から解放されていたとはいえなかったとして、警備員側の訴えを認めて、会社側に、訴えた警備員8名で合計約2500マン円の未払い賃金の支払いを命じました。




控訴審では、5名の労働者との間で和解が成立しましたが、残る3名の労働者については和解不成立のため判決となりました。

結果は、労働者側の逆転敗訴でした。





控訴審は、係争期間中に10名の警備員が仮眠・休憩時間内に実作業に従事した実作業が17件で、1人あたりにすると1年に1件にも満たず、このうち仮眠時間を中断して作業に当たったのはわずか4件に過ぎなかつたこと、それらのほとんどが、他の警備員に対する配慮からいわば自主的に作業に従事したと言えるもので、裏を返していうと、使用者からの指揮命令によって従事させられたものではないと評価できること(ローテーションは警備員側で作成しており、そのような事情のもとではどのような動機で作業に従事したのかが重要である)、仮眠をとる際はシャワーを浴びて着替えをして仮眠を取っていたことなどを指摘し、本件では、仮眠・休憩時間が労働時間に当たるものとは認められないとされました。




本件は上告受理申し立てされたが不受理で終結しているということです(最高裁の上告不受理は、なんら判断が示されたことにはならないので、控訴審の判断を是認したという評価にはならないものです。)。




どうなんでしょう・・・会社としては病院との契約上4名の警備員を配置していたわけで、警備員としても会社との契約上、病院の中にいなければならず、実際に仮眠・休憩時間中に作業があったかどうかはあまり重視すべきではないように思うのですが。。




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