判例時報2251号で紹介された事例です(東京地裁平成26年11月11日)。

 

 

 

不動産登記の請求というのは、権利があってそれを登記してもらいたい人(登記権利者)が、権利がないのに登記が残ってしまっている人(登記義務者)に対して行うのが普通です。

 

 

 

ただ、場合によっては、その逆、登記義務者が登記権利者に対して、登記をするように求める(登記引取請求)をするということもあります。判例上も、真実の権利関係に合致しない登記があるときは、真実に合致せしめることを内容とする登記請求権を有するものとされています(最判昭和36年11月24日)。

売買したのに登記名義か残っていると、固定資産税は元の登記名義人に対しては賦課されることになるので、このようなことを避けるためです。もっとも、通常このようなことはありませんが。

 

 

 

本件も特殊なケースで、相続財産管理人が、相続人の不存在と特別縁故者の不存在が確定したことから、当該不動産の他の共有者に対して登記の引き取りを求めたという事案です。

 

 

 

本件でも、前記の最高裁判例に従い、登記の引き取りを命ずる判決となっています。

 

 

 

相続財産管理人というのは、相続財産についてすべて清算してからでなければ業務を終了できず、また、破産管財人と違って資産の放棄ということもできないので、登記名義が残ったままの不動産についても、わざわざこのような訴訟を提起して処理しなければならなず、結構大変なのです。