判例時報2250号で紹介された事例です(福岡高裁平成26年6月30日決定)。

 

 

 

 

 

医師である夫Xと薬剤師の妻Yが、2人の子について親権者をYとして、それぞれ月額20万円と養育費を定めて離婚しましたが、離婚から約1年2月後、Xは再婚して再婚相手の二人の連れ子と養子縁組し、さらに、約3年後に再婚相手との間に子どもを設けました。Xの扶養義務の対象者としては、離婚した際の子ども2人から養子縁組した2人の子に加えて、新たに生まれた子ども、さらに再婚相手と増えてしまったわけです。

 

 

 

そこで、Xは、事情の変更があったとして、民法880条に基づいて養育費の減額を求めました。

 

 

 

原審の家裁では、養育費算定表等をもとに、現在の双方の収入等から計算すると、養育費としては一人当たりの養育費は月額15万円となるが、計算上の養育費が下回ったからといって直ちに減額が認められるものではなく、従来の調停や審判の前提となった事情の変更があり従来の養育費を維持するのが相当ではなくなったと言えるかどうかの検討が必要であるとする通説的見解に立った上で、養子縁組をしたことなどはXが自分の意思でしたことであるし、約6000万円の収入を得ている開業医であるXの資力収入からすれば、十分に支払うことは可能だとして、養育費の減額を認めませんでした。

 

 


抗告を受けた高裁では、計算上の現在の養育費を月額18万円とした上で、用意縁組や新たな子の出生は、養育費を取り決めた従来の調停時には想定されていなかった事情であり、事情は大きく変化しているとして、養育費を一人当たり17万円に減額することを認めました。

 

 

 

本件では、養子縁組や新たな子の出生といった事情の変化があった場合の養育費の減額について問題となったほか、双方が高額所得者である場合の養育費の算定のあり方なども問題となっています。

 

 

 

 

 

本件とは離れますが、高額所得者の場合、養育費も高額になりがちで、離婚する際には「別れたい一心」で後先考えずに決めてしまって後から減額を求めるというケースも少なからずあります。

 

 

 

離婚の際は慌てずに冷静になりましょう。

 

 

 

本件は確定しているということです。