判例タイムズ1409号などで紹介されている事例です(仙台高裁平成25年12月26日判決)。



本件は、昭和60年に婚姻した夫婦ですが、平成14年から16年にかけて夫が不貞を行い、それが原因で婚姻関係が破綻したという夫が有責配偶者であるという事例です。夫は不貞行為が発覚した平成16年には一回目の離婚請求を行いましたが、当時、夫婦の間には18歳、16歳、12歳の子どもがいるという状況であり、さすがに有責倍遇者からの離婚請求が認められる3要件にはあたらないということで、請求を棄却されています。



その後、夫婦間では婚姻費用分担の手続が複数回行われましたが、夫が決められた婚姻費用の支払いを遅滞して、給与の差し押さえを受けるというじたいともなっていたということです。



時が流れ、平成23年、夫側としては頃合いは良しと見たのでしょう、再チャレンジということで離婚請求を提起したところ、一審は、夫が離婚給付として400万円支払うことを提案していることや長期間にわたり婚姻費用を支払ってきたこと、二男が私立大学の工学部に通っているが精神的な成長や卒業までの短さなどを考えると未成熟子として扱わないことには合理性があり、同居期間約19年弱に比して8年6か月の別居という本件において、当事者双方の諸事情が変容したという理由で、夫からの離婚請求を認容しました。




これに対して妻が控訴したところ、高裁では、本件では、未だ、有責配偶者である夫からの離婚請求を認めるだけの状況にはないとして、一審判決を取り消し離婚を認めないという逆転判決となりました。



具体的な理由としては、夫51歳、妻52歳という夫婦の年齢を考えると、別居期間が同居期間に比較して相当な長期に及んでいるとはいえないこと、控訴審では1000万円という高額な離婚給付を支払う提案をしているものの(但し支払い方法は頭金250万円、残り分割)、夫は婚姻費用の支払いを遅滞した前歴があって履行に不安を残していることまた、妻が本件の一連の手続に伴い法テラスから125万円程度の償還債務を、また、妻はうつ病と診断されて稼働できない状況となっていること、さらに、二男の教育費として約178万円程度の教育資金の借り入れを残していることなどを考えると、離婚により妻は精神的、社会的、経済的にきわめて過酷な状況におかれることになり、本件離婚請求は信義則に反すると言わざるを得ないとされました。




本件は上告受理の申立て等がされたものの不受理等となっているということです。




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