判例タイムズ1470号で紹介された事案です(東京高裁決定平成26年7月11日)。



決定文の限りでは詳細な事案の内容まではよく分かりませんが、平成26年に破産の申立てをするに当たって、(破産管財人がつかない)同時廃止という手続きで進めることを求め、裁判所も同時廃止決定(配当するだけの資産がないということで破産の開始と同時に手続きを廃止するという意味です)をしたところ、その事案で実質的に唯一の債権者が即時抗告したものの、棄却され、破産手続きとしては同時廃止となりました。




そして、免責を許可するかどうかについて、破産裁判所はいったんは免責を許可しましたが、債権者の即時抗告を受けて、再度の考案(もう一度考え直すこと)をして、免責許可決定を取り消して不許可としました。



これに対して破産者が即時抗告したのが本件です。




破産者は、破産申し立てから遡ること約13年以上前に、自分の名義であった自宅不動産を妻に対し譲渡していました。

この当時、破産者は既に住宅ローンも支払えないという状態であったようで、さらに、自宅不動産はオーバーローンではなく余剰価値が1000万円を超える程度の価値はあったということであり、高裁では、このような自宅不動産の妻に対する譲渡は、債権者を害することを認識してなされたものであり、破産法252条1項1号の不利益処分として、免責不許可事由に該当するものとされました。



そして、破産者の債権者に対する対応が不誠実でありほとんど返済がされていないという事情などに鑑みると、破産者が高齢で今後就労の見込みがないことを考慮しても、免責不許可とすることが相当だとしました。




この決定の中で特徴的なのは、本件のように、債権者の反発が強く予想されるような事案においては、免責を許可すべきかどうかにおいて、破産管財人による中立的な調査、その意見が重要な意味を持ってくるものであるところ、破産者が同時廃止手続きを希望して破産管財人をつけないという選択をした以上、破産裁判所は破産管財人の意見を聴くことができないのであり、その破産裁判所が免責不許可という結論を出したのであれば、抗告を受けた高裁としてもその判断を覆すだけの資料は持ち合わせていないのだから、破産裁判所の免責不許可という判断を尊重せざるを得ないと述べている点です。




債権者からの反発が強く予想されるような件においては、費用が安上がりだからと安易に同時廃止手続を選択するのではなく、きちんと破産管財人を選任してもらう管財手続を選択すべきだということになります。




私が弁護士になったころには、「なるべく同時廃止手続にしてもらってナンボ」というような風潮があったようにも思うのですが、時代は変わったというべきでしょう。








■着手金の簡易見積フォーム
(弁護士江木大輔の法務ページに移動します。)


■弁護士江木大輔の法務ページに移動します。