金融・商事判例1443号で紹介された事例です(東京高裁平成26年3月5日決定)。




自然人(個人)が自ら破産する場合,その目的は債務を帳消しにしてもらうための免責決定を得るためですが,実務上,ほとんどの案件で免責が許可されています。私自身も,破産免責を申し立てた件で,債権者から感情的なものを含む反対意見がされたことはあっても,免責が許可されなかったということはありません。




免責が不許可となるのは,悪質な資産隠しや破産管財人に対する不協力といった事情があるケースに限られているものと思います。



本件は,法人(会社)とその代表者(個人)の破産の案件ですが,出資法に違反する条件で多くの顧客から数十億円の投資を募ったというものでした。



さらに,破産前には整理屋グループと結託して会社の資産隠しを行うという悪質なものでした。




資産隠しは破産法252条1項1号に規定する免責不許可事由ですが,理論的(条文上)には,会社と代表者個人の資産は別ものです。

代表者個人が,いくら会社の資産を隠匿したところで,自分自身の個人資産を隠したり流失させていなければ,代表者個人の免責不許可事由には該当しないことになります。




本件で破産裁判所(東京地裁民事20部)の決定では明示されていませんでしたが,高裁の決定では,代表者個人が会社資産を流失させた場合,代表者有していた会社の株式の価値を毀損することになるし,また,代表者が会社に対し貸し付けていた貸付金の価値も低下させることになるという論理づけで,本件代表者個人自身の資産価値を不当に減少させる行為として,破産法252条1項1号に規定する免責不許可事由に該当するとされました。




免責不許可事由があったとしても,裁判所は裁量により破産者を免責(債務の帳消し)を許可することができ,本件破産裁判所(東京地裁民事20部)は,破産管財人の「かろうじて裁量免責を認めることができる」との意見もあったからか,免責許可決定をしましたが(具体的な理由はなし),債権者からの抗告を受けた高裁では,破産手続開始決定後に代表者が破産管財人に協力して流出させた会社資産の取り戻しなどに協力しているとしても,出資法に反するような出資を募って多数多額の被害者を出した本件のような事案であることや整理屋グループと結託して会社資産を流出させたことなどの事情からすると,代表者の不誠実性は上代であって許されるものではないとして,免責不許可とする判断がされました。





本件は確定しているということです。






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