判例時報2170号で紹介された事例です(札幌地裁平成24年9月26日)。



当時10歳の男児が,通っていた小学校での問題行動があったため,両親の相談を受けた児童相談所が児童自立支援施設(家庭学校)を紹介し,児童福祉法上の措置として当該男児を家庭学校に入所させることになりました。



児童福祉法27条1項3号は一定の場合に,「児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、情緒障害児短期治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること」を都道府県の義務として規定しており,この規定に基づく措置入所ということになります。



ところが,入所から約5か月後,当該男児が,家庭学校の4人部屋の同室の少年(加害少年 当時15歳)から,陰茎をなめさせる,肛門に挿入されるなどの性的な被害を受け,このことが発覚したことから,当該男児とその両親が家庭学校を運営する社会福祉法人と北海道に対して慰謝料等を求めて提訴したのが本件です。




裁判所は,加害少年を児童相談所から受け入れた際の書類には性的な逸脱行動についての記載はなかったこと,そのような引き継ぎもなかったこと,加害少年が入所してから性的な逸脱行動が問題となったことはなかったことなどから,家庭学校側が加害少年の行動を予見することは困難であったと認定しました。




また,家庭学校では消灯後一晩につき2回は見回りしていたこと,その際部屋内に立ち入ったり,ドアのの窓から部屋内を確認したりしていたことなどから,加害少年の監視を怠ったともいえないとしました。




加害少年に関しては,家庭学校の職員に対しても反抗的な態度を取っていたり,家庭学校に来る前の児童相談所での保護記録には別の児童に対して「性器をなめろ」と発言したなどの記載があったようですが,裁判所としては家庭学校側の責任を認める要素とはしなかったようです。




ただ,学校内での生徒による他生徒に対する加害行為については,学校側の責任を認める裁判例も多いようですので,本件は上訴されているようですので,さてどうでしょうか。





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