掲示板「2ちゃんねる」に自己の名誉を毀損する書き込みをされたことから,手間ひまをかけて発信者を特定し,損害賠償請求を行い,損害として発信者特定のための調査費用も認められたという事例です(東京地裁平成24年1月31日判決 判例時報2154号)。



インターネットで名誉棄損がされた場合,その発信者を特定していく作業が大変になります。




ISP(インターネットサービスプロバイダ)が保有する契約者情報にたどり着くために,2チャンネルの場合,管理者である海外法人に対するIP開示仮処分を行い,投稿者のIPアドレスとアクセスログの開示を受けるという手間と時間がかかるものであり,本件でも原告は弁護士に依頼してこれらの調査を行いました。




本件では,裁判所は名誉棄損の慰謝料100万円,弁護士費用10万円に加えて,契約者情報の取得のためにかかった調査費用63万円についても損害として認めて,投稿者に対して賠償を命じました。




調査費用も損害賠償請求したいというのはよくある相談ですが(特に,離婚の不貞行為の立証のためにかかった調査費用),どのような場合にも必ず損害として認められるというわけではなく,損害賠償請求するために必要な範囲内で賠償の対象となるというのが一般的な考え方です。




不貞行為と調査費用に関しては,不貞行為の疑いがある場合常に調査事務所・探偵に依頼して調査をするというのが一般的というわけではないことなどから,「調査費用それ自体は本件不貞行為と相当因果関係がある損害と評価することはできないが,このような出費をしたことは,慰謝料算定の一事由として斟酌すべきである」とした裁判例(東京地裁平成16年8月31日判決)があります。

ただ,探偵に依頼しなければ不貞行為の立証自体ができず,かつ,調査結果を裁判所に提出したことによって不貞行為を立証できたような場合には,損害に含まれるのではないかと考えられます(私見)。





なお,本件については控訴されています。






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