最高裁が高裁の判断を破棄した事例です(平成24年3月6日判決 判例時報2152号)。




ある地方公務員が傷病により,地方公務員共済組合が地方公務員共済組合法という法律に基づいて,療養費などの支給を行いました。




その後,同一の傷病に関して,通勤災害という認定を受け,地方公務員災害補償法という別の法律に基づく補償金も支払われました。




療養費など,支給されたお金の性質としては重複するものがあり,先に支給した共済組合は,当該公務員に対し,返還を求める請求書を送付しました。




ところが,この公務員が返還をしなかったので,裁判になり,最高裁までもつれ込むという事態となりました。




一審は共済組合の主張を認めて返還を命じましたが,高裁は一転して公務員に返還する義務はないと判断しました。理由としては,共済組合が支給した行為は行政処分に該当するが,返還を求めるという請求書だけでは行政処分の撤回には当たらないので,返還を求めることはできないという形式的な判断でした。



最高裁は,それはおかしいということで,高裁の判決を破棄しました。




最高裁は,共済組合が支給したお金のうち,①療養費,高額療養費,入院付加金については行政処分としての決定に基づくもの,②入院見舞金などについては行政処分ではなく贈与契約に基づくものであるとして,法律的な根拠は分けましたが,返還を求める請求書の送付によって,①については行政処分の撤回,②については定款または要綱に基づく贈与契約の解除の意思表示をしたものであるとして,いずれにしても,共済組合は支給したお金の返還を求めることができるとしました。



事実を法律というフィルターにかけた場合にどう評価するかという法的思考の特徴をよく表している判決だと思います。




「返還を請求します」という記載をそのまま生の記載として見るのではなく,そのような表現にはなっていなくても,「行政処分の撤回」「贈与契約の解除」という法律用語に該当するかどうかという観点から見ることができるかということですね。







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