判例時報2148号で紹介された札幌地裁平成24年3月9日の判決例です。




本件は,北海道立の高校の柔道部員であった女子高生が(ただ,もともとマネージャーとして入部しその約2か月後から柔道を開始したようです。事故があった翌月に初段の昇進審査を受ける程度の技能であったということです),練習試合で大外狩りをかけられた際に,頭部を強打し,四肢不全麻痺,高次脳機能障害等の後遺障害を負ったとして,柔道部顧問教諭や学校長に安全配慮義務違反があったとして,学校設置者である北海道に対して損害賠償請求を求めたという訴訟です。




事故が起きたのは平成20年8月8日の練習試合でしたが,その年の5月には,当該女子高生は,「急性硬膜下血腫,脳挫傷により約2週間の安静を要する」との診断を受け,診断書を柔道部の顧問教諭に対して提出していましたが,その後柔道部の練習に復帰していたという経緯があったようです。この5月の怪我についても,柔道部での練習中に生じたものとして認定されています(この点について,北海道は,柔道の練習とは無関係に生じたものだと主張しましたが,退けられています)。




8月8日の事故は合宿中に行われたものでしたが,本来その合宿には親権者の承諾書を提出することになっていたが,本件では提出されていなかったということのようです。




上記のような事実経過のもと,裁判所は,顧問教諭らは,女子高生を練習試合に出場させるべきではなかったのに,漫然と出場させた過失があるとし,北海道の賠償責任を認めました。




すなわち,他校との練習試合では対戦相手からどのような技を仕掛けられるか分らず,対戦相手も女子高生がどの程度の技量をもっているのか不明なのであるから,女子高生の柔道技能はそれほど高くはなかったことも考えると,女子高生が頭部を打ち付ける危険性は十分に予測できた筈であるとしています。




また,本件事故に先立つ5月のけがに関して,北海道は,女子高生が顧問教諭に対して「完全復活ですよ,先生。柔道してよいとお医者さんが言っていました」などと告げたとして,顧問教諭らとしては防ぎようがなかったとして反論しましたが,裁判所は,診断経過などからそのような事実は認められないとしました。なお,高校の事実調査に関して柔道部員に対する口止めがされていたということがはっきりと認定されています。



本件で北海道に対して命じられた賠償金額は約1億3000万円です(但し,仮執行宣言は付けられていません)。




なお,本件は控訴されています。




公立学校で柔道などの武道が必修になるということですが,大丈夫なのでしょうか。




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