弊社出版の『人物のまち福島』は、
採用と教育研究所所長の半田真仁が
福島で出会った素敵な人物、企業さんの
エピソードをまとめた一冊になっています。

この本に掲載されているエピソードを紹介させていただきます。

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6.笑うお食事会
 今年も残りわずかとなりました。毎年十二月二十九日に「笑うお食事会」を開き、一年を締めくくっています。児童養護施設「アイリス学園」の子どもと地元の大人が交流する企画で、今年で5年目になります。子どもたちからわれわれ大人が多くのことを学ぶ機会にもなっています。
 施設には様々な家庭の事情を抱えた子どもが入所しています。この子たちが一番寂しい思いをするのが年末だそうです。ボランティアが減少し、施設の中でも一時帰宅できる子、できない子と分かれてしまうからです。
 東日本大震災の時の子どもたちの作文の一部を紹介させていただきます。「震災で初めてお母さんから心配の連絡がきたのでうれしかった」、「初めて大人と一緒に寝ることができてうれしかった」(安全確保のため一定期間、全員一緒に寝たため)。 働かれている職員の皆さんは子どもたちにとって先生であり、親であります。職員の皆さんは、自分の家族と接するのと同じように、子どもたちの家族として奮闘されています。傷ついた子どものことを一生懸命に考え、支援している皆さんにはいつも頭が下がるばかりです。人のために生きる姿に、輝きを感じずにはいられません。
 「笑うお食事会」の参加者には、ボランティア活動ですが参加料をいただきます。参加者自身と子どもの食事代、アミューズメント店の入場料です。子どもと一日一緒に遊び、食事をすることがボランティア参加の条件。参加者同士の名刺交換や写真撮影など、ビジネスのメリットになる関係づくり、PRは禁止で、大人側には全くメリットのないイベントです。それでも毎年、多くの参加があります。福島県の大人たちは志があり、思いやりのある方が多いとしみじみ感じます。
 イベントでは、子どもと大人がペアになって遊びと食事を楽しみます。元気いっぱいに子どもたちと、一緒に体を動かす大人たち。終わるころにはすっかり仲良くなっています。食事は「しゃぶしゃぶ温野菜横塚店」さんにいつもお世話になります。普段は店のスタッフがお代わりを運ぶのですが、この日は子どもたちが自分で取りに行きます。大人は箸の使い方など食事のマナーも教え、「食事」という日常を一緒に体感します。食事の後片付けを子どもたちが行い、終了。子どもたちは帰りのバスに乗り込みます。大人たちはバスの前に一列に並び、手を振り、子どもたちもまた、身を乗り出すように大人たちへ手を振り返します。
イベントが終わると、子どもたちから手紙が届きます。「一緒にスポーツをしました。楽しかったです」「遊んでくれてありがとうございました」など感想が書かれ、どの手紙にも「また来年も楽しみにしています」「また、会いたいです」と、大人たちとの再会を願う言葉がつづられています
みんなが幸せになり、このイベントを開催する必要がなくなることが一番望ましいのでしょうが…。私自身は何よりも、「物よりも心の継続が大切」ということを子どもたちや参加者のみなさん、職員の皆さんから学ばせて頂いています。感謝。

(第五回民報サロン 二〇一三年十二月三日 掲載) 

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「人物のまち福島」
著:はんだ しんじ
SK文庫
 
発行所:採用と教育研究所
 
この本に関するお問い合わせは、採用と教育研究所(024-529-5153)まで

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