「東広島市」と聞くと大きな都会を想像しかねない。しかし、山陽本線の路線図で見ると、駅名は東広島となっているが古くからある八本松駅と地域的には重なっている。
事件の起きた地域の住民がどちらの駅を利用するのかわからないが、どちらにしても、東京で言えば中央線中野駅と新宿駅といった感じの距離感である(これは路線図誤読だった!「東広島」は山陽新幹線の駅。在来線で矢野から東広島市へ出る最寄駅は、「西条」になるようだ)。同時に、海田市駅(のすぐ次がJR呉線「矢野駅」)から広島市へ出るにも、向洋駅の次、二駅に過ぎない。

広島-矢野-東広島

何が言いたいのか? ガスコンロの購入の必要に迫られたとき、ごく一般的な経済心理として、西へ、つまり中心部広島へ行くか、隣町である東へいくか、どっちが得かということだ。


東京の例で言えば、中野駅から新宿に出るか、それとも阿佐ヶ谷に向かうかといった経済的選択である。

東京中野なら、とうぜん新宿へ向かうだろう。あの地域でもそうなのではないか?
量販店の数も多いだろうし、価格競争も激しく、少しでも安く買おうという経済心理が働けば、東広島ではなく中心都市広島(海田駅からは18分190円)を目指すのではないか? 距離的差はないに等しい。交通費も数十円ほどの差しかないはずだ(大特価セールスの折込チラシがあれば多少話は違ってくるが)。


(今、路線案内で調べると海田市→東広島は所要時間乗換ほか含む47分、乗車時間20分!とある。八本松でも30分、320円である。呉線の矢野から広島まで27分190円、東広島へはやはり56分、新幹線に乗り換えてのことなので、運賃は2730円。在来線だと時間にして2時間1分、1890円である! entryする前に気づけば良かったのだが、購入者が矢野の住民とすれば、一般的には、これは明らかにおかしな話である。少なくとも経済心理学的には、と言っておくが)。

矢野→西条でも54分(乗車27分 他27分) 距離:28.0km 運賃片道480円 となる。

矢野→広島が27分(乗車11分 他16分) 距離:9.0km運賃片道 190円。時間的にも、運賃的にも圧倒的に中心都市広島へ出るほうがお徳である。


地域の掲示板で、この疑問に答えてくれるかもしれない書き込みを見つけた。
自衛隊員の動きは「東へ」が大きいというのだ。なぜか? 八本松に演習場があるからだそうである。

おそらく矢野からの通勤定期が使えるだろうから、交通費は問題にならないことになる)。


セットで購入する必要があったのはなぜなのか? コンロの買い替えではなく、ガス設備の全くない状態、つまり、都市ガスならガスの元栓は来ているが、用具が何もない状態。プロパンならなおのこと、入居して間がないということになる。セット購入で割引があったということも考えられる。しかし、結束テープなどはガス工事店が用意しているのではないのか?
地元のサービスをまだよく知っていない新しい転入者。一ヶ月以内。長くても被害者家族が越してきた以上ではない。購入の際、購入者は店員と比較的多くの言葉を交わしているはずである。


しかし、自衛隊官舎、派遣社員寮などであれば、キッチン周りの設備は新調しなくとも据付のままある、のではないだろうか。東京にもある安アパートでさえ、先客が置いていってまだ使えるという意味で据付状態、ということもある。
さらに。炊き口が2基あるタイプであることからみて、丸いガスコンロ一個の乗った流しと、トイレ兼バス、6畳一間と言った安アパートでないことは確実だろう。


もちろんどれも、そういう傾向にあるだろうということであり、例外もあるし確定的なことを言えるものではない。ただ個人の住宅を新築しての需要ではないだろうということは、ほぼ百パーセント断言してよいのではないか。


ガスホースとその留め口を閉める結束バンドとコンロを、同一の店でまとめ買いする人物とはどんな人物か?


最近この地域に引っ越して、賃貸のアパート、マンションなりに新入居した人物である。
もちろん買い替え需要もあるかもしれない。だが買い替えでセットである必要はあるだろうか?

そして、そのセットの購入が、何かを意図した(偽装など)計画的なものである場合には、ここに述べたような生活者像はすべて意味をなさなくなるのだが。


経済的心理に煩わされることなく(矢野の住民が)、時間的にも近く運賃も安い中心都市でなく、時間もカネもかかる衛星都市で1万円前後の商品を買ったとすれば、購入者はおそらく男性である。
ガスコンロセット本来の目的で買った場合には。
かつ単身者だろう。かみさんがいれば、店に出向いたのは男性であったとしても、価格情報によるかみさんの指示で動くのが普通だろうから。


しかしすべてが生活者像を誤誘導する偽装であった場合、どの店を選んだか、いくらで買ったか、セットであるかないかは、問題ではなくなる。

経済的心理に伴われる生活者像が正しい、つまりコンロ本来の目的で購入しており、かつ犯人が購入者である場合、それは性的悪戯が目的の、「計画性の低い犯罪」である。かつ、まだあの地域に居住し始めて3ヶ月以内の新参者であろう。


セットで購入したことについては計画性において二重の解釈が成り立つ。


1.ダンボールだけをあらかじめ用意する計画であった場合、それだけの場合、ホース、結束バンドまで揃えて買う必要はない。


2.計画的に揃えて買ったとすれば、それは生活者像、犯人像を誤誘導するための偽装の小道具である。


2000世帯への聞き込みの結果、捨てたと答えた住人はいなかったという。聞き方にもよるだろうが、とりあえずこの結果を信じるとすれば、犯人はコンロ本来の目的ではなく、犯行のために計画的に購入し、実行のときまで未開封のまま? どこかに置いていたことになるのだが(根拠はないが、なぜか、畳んで保存していたとは、どうしても思えないのである)。


「殺害実行現場」=「死体遺棄現場」という前代未聞のこの事件、多すぎる遺留品の大元となっているガスコンロ購入の謎と、長くびくような嫌な感じがする。あいりさんには誠に申し訳ない話だが、最悪、迷宮入りしそうな悪い予感がしている。
そんなことになってほしくないのは言うまでもない。だが、なぜ一週間近くも経ったいまごろにならなければセット購入であることが判明できなかったのか?


捜査本部による情報作戦であることを祈るばかりである。