抜歯を伴う歯列矯正では、バイト(噛み合わせ)が深くなりやすい傾向があります。

下顎前歯と上顎前歯の上下的な重なりをオーバーバイトと呼んでいますが、抜歯をすると、このオーバーバイトがより深くなりやすいのです。

これは、抜歯スペースを詰める際、臼歯(奥歯)の前方への傾斜(近心傾斜)と犬歯の後方への傾斜(遠心傾斜)によって起こります。


正常なオーバーバイトの深さは、歯科矯正学辞典によると0~4mmと記されており、かなり幅があります。

オーバーバイトが0mmというのは、上下の前歯が先端同士で当たっている状態で、切端咬合と呼びます。

一方、4mm以上のオーバーバイトがある歯列は、ディープバイト(過蓋咬合)と呼ばれます。

機能的には平均で2~3mmのオーバーバイトが適正であると考えられています。


オーバーバイトが深いと、様々な問題があります。
●下顎の運動の自由度が少なくなり、咀嚼筋を中心とした頭頸部の筋肉に過緊張を引き起こし、こりや頭痛などの原因となる
●前歯部の咬合が強く当たりやすく、下顎が後方へ押し込められやすい
●下顎の後方への偏位は、舌房を狭くして、低位舌になりやすい
●下顎の後方への偏位は、顎関節症を惹起しやすい
●程度によっては、下顎前歯が上顎の口蓋歯肉を噛む
●相対的な上顎前歯の前突(出っ歯)および上口唇の突出
など

このため、抜歯矯正を行うにあたっては、バイト(咬合)コントロールが極めて重要となります。


さて、では前回の続きです。




8か月後。上顎4前歯のレベリングが完了し、前歯の後方移動を進めていく。犬歯の後方移動に伴って、オーバーバイトが深くなっているのが分かる。並行してディープバイトの改善も行っていく。

 

9か月後。 大きな変化は見られないが、オーバーバイトはやや浅くなってきている。


   10か月後。下顎前歯部のブラケットおよびワイヤーが見えてきているのが分かる。上顎前歯を舌側(内側)に入れるためにも、過蓋咬合(ディープバイト)の改善は不可欠。




歯列は、歯がきれいに並んでいるだけではダメで、機能的にきちんとした役割を果たせることがとても重要です。

歯がある程度きれいに並んでくると、「あとどれくらいで終わりますか?」という質問が多くなりますが、歯列矯正で本当に大切なのはここからです。

上下の歯を、正しい顎の位置で、しっかりと緊密に噛ませることで、スムースな下顎の運動を構築し、咀嚼機能を高め、身体の重心バランスもとれて血行が良くなり、体調も良くなる・・・

そのような成果を狙っていくには、それなりの時間が必要です。

はやる気持ちを抑えて、じっくりとお付き合いいただけたらと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

(続きはpart5へ)

 
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