カナザワ映画祭2019期待の新人監督グランプリ作品『血筋』について | 映画遁世日記

カナザワ映画祭2019期待の新人監督グランプリ作品『血筋』について

カナザワ映画祭2019「期待の新人監督」 終了して2日ほど経つが、なんたることだろう、グランプリを獲得した角田龍一監督『血筋 핏줄』の影が薄い。今回、観客賞を受賞した松本大樹監督『みぽりん』のファン(多くは予告編を観ただけで心奪われ全力応援されていたそうです。素晴らしいことだな)の情熱的なリアクションでSNSの書き込み(つぶやき)欄埋め尽くされんばかりの勢いが凄く、片や角田監督は(受賞スピーチ、舞台挨拶等を観た印象では)そういった情熱的なリアクションとは真逆をゆくようなお人柄のようで、その辺が『血筋』のグランプリ受賞のスゴさを埋もれさせていってしまっているのではないかと思います。思えば『血筋」の共同プロデューサーの山賀博之氏は超絶的・熱血的な押し(←想像です)でDAICON FILM→オネアミスの翼(バインダイ巻き込む)→ガイナックスを設立→そうなるとエヴァンゲリオン…と、のし上がってこられた偉人。角田監督はすぐそばにこんなすごい先生がいらっしゃるのだから、もっともっとこの映画『血筋』を世に知らしめる努力を情熱を持ってするべきだと外野のぼんくら映画ファン(=無責任)としては思ってしまうのです。

 



自分はそれこそ小川プロ辺りの古典ドキュメンターから現在に至るまで、日本のドキュメンタリー映画は人並みに観てきました。むかしNHKアーカイブスで見た古いTVドキュメンタリーも面白かった。関係ないけどフレデリック・ワイズマンが金沢にいらした時にサインもらったヨ。この程度のドキュメンタリー耐性で観た『血筋』。めちゃくちゃ面白いと思いました。まずひとつに、この映画はラッキーにラッキーが重なっているいます。例えとしてどうかと思いますけど、今人気のテレビ番組『ポツンと一軒家』で、苦労して一軒家に辿り着くはずが速攻で辿り着いてしまったのだけれど、その後が実は超面白かった(ラッキー)!といった感じか。もうひとつのラッキーは、角田監督の境遇そのものです。この映画は中国朝鮮族の方々を題材としたものです。そもそも中国朝鮮族の歴史や境遇をぼくたちが調べたり考えたりすることは殆どなかったと思います(あまりその存在がメディア等で紹介されないからです)。実際その歴史や境遇は非常にセンシティブなもので、ぼくたちのような人間が軽々しく語っていいようなものではないような気がします。しかし、角田監督はその血筋を引くものとしてその問題(?)にドスドスと踏み込んでゆきます。若さもあると思います。とてもシリアスで…しんみりと考えさせられる場面もあります。それだけでも「よくやってる感」はあるのですが、この映画が凄まじいのは、笑えるということです。ざっくり言うと、角田監督のお父さんのキャラが面白すぎるのです。中国朝鮮族を題材にしてるのに超笑える…いじる…煽る…。こんなことは肉親そのものである角田監督であるから出来たことで、ぼくらがマネしたら袋叩きだと思います!角田監督…ラッキー!(←言い方…)

 



センシティブな内容をはらんでいるのに、キャラが強烈すぎて笑ってしまう…。語弊があるかもしれませんがこの映画は『ゆきゆきて、神軍』の系譜なのではないでしょうか。

最後に、敬語調をとっぱらってこの映画の感想を書きます。

あぁぁ〜、めっちゃ面白かった。あのオッサン最高や。ウケる。それを挑発する監督もすげぇ。肉親だから出来るんだろうなコレ。このオッサンもっと観たかったなぁ。延吉市って中国なのか韓国なのか分からなくなるな!すごく興味深い街や。オッサンもすごいけどその弟(伯父)もある意味ヤバいな!監督もこんな映画作ってヤバいな!血筋って凄いな!!でも、これがカナワザ映画祭グランプリって納得いかないんだよなぁ。面白さでいえばグランプリは納得だけど、これに関しては闘うフィールドが違うんじゃいかな???って思うんだけド!!!!しかしながら、もっともっと多くの方々がこの作品を観てくれますよう御祈りして

おわり




※ネットで確認できる本作の画像、この映画の面白さを伝える画像がひとつもないような気がするんですが…。この列車の車掌さんの写真なんかもカッコよすぎ。もっとギラギラした本作らしい画像が出回りますように(祈)