後藤大輔「となりの人妻 熟れた匂い」（2011）

となりの人妻 熟れた匂い （2011）
監督/脚本：後藤大輔
撮影監督：飯岡聖英
音楽：大場一魅
助監督：佐藤吏
協力：小川隆史
出演：冨田じゅん、松井理子、瀬名りく、なかみつせいじ、世志男、沼田大輔、久保新二、薫（写真のみ）

コピペ解説：
息子を亡くし酒びたりで仕事をしない夫と、それを支える妻。
夫は海岸で大金を発見するが、翌日妻に夢だと言われ…。
落語『芝浜』をモチーフにした後藤大輔監督待望の新作!!

「となりの人妻 熟れた匂い」…。なんなんだこのあまりにもピンク映画によくありがちな、極々フツーなタイトルは。と、思っていたら映画のほうはフツーどころか異常だった（笑）。冒頭からテンションがハンパではない。。酔っ払ったなかみつせいじがハイテンションというだけではなく、映画そのものがハイテンションなのだ。対峙する奥さん役の冨田じゅんも酔っ払って凶暴になっているなかみつせいじに負けていない。話は前後するが、何故なかみつせいじがこうもハイテンションに酔っ払っているのかというと、彼はかつては地元芝浜一の漁師だったのだが、小学校に上がるお祝いにと船に乗せた息子を事故で亡くし、それ以来酒びたりで仕事をまったくしないダメ人間になっている…という設定なのである。今日もなかみつは朝っぱらから呑み続け、2階にある子供部屋（息子が死んだ時のままになっている）でさらに酒盛りを続けようと階段を駆け上がる。それを阻止しようとする妻・冨田じゅんと階段で揉み合いになる夫婦。イマドキ誰もやらないような、お互いのズボンをズリ下ろし合いパンツ丸見～えになるギャグが凄い（笑）。そうこうしているうちに、カラみ始める二人ｗ。ここから僕の妄想なのだが、このシーン、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」の階段でのカラみシーンを思い出してしまった。あのシーンも主人公・ヴィゴ・モーテンセンがいい歳こいてチア・リーダーのコスプレした妻と階段で妙なテンションでエッチするシーンだったと記憶する。で、このデヴィッド・クローネンバーグ繋がりというワケでもないのだがこの「となりの人妻 熟れた匂い」。落語をモチーフとした人情悲喜劇だというのに、何故か全体像としてはデヴィッド・クローネンバーグやデヴィッド・リンチ監督の映画のような、ノンストップ悪夢映画的ムード（＝ノリ）に支配されているのである。楽しいハズなのに…ヘンな感じなのである（笑）。なんとユニークなんだろう。こういう映画を観てしまうと、「あぁ、ピンク映画もまだまだ安泰だ」なんて思ってしまうから不思議だ。実際安泰なんかじゃないんだろうけども（'A`)。

このフツーではない映画を支えているのは、もちろん後藤大輔監督の才気であり、影で本作を支える池島ゆたか（プロデューサー）、佐藤吏（助監督）、小川隆史（協力）、大場一魅（音楽）という面々が皆、揃いも揃ってマトモな人間ではないということもあろう（注：ホメてます！）。さらにさらに、（いまどき）出演女優全員ピンク映画初出演！という暴挙（注：ホメてます！）が、本作に関しては作品にフレッシュな風を吹き込むことに大成功していると思う。もちろん、それを支えるのが名優・怪優・奇人・変人のなかみつせいじ、世志男、久保チン（久保新二）という三人なのだから、実に安心、というかバランスが取れている。中でも久保チンが演じた煙草売りのジジイという役は、なにげに久保チンの新境地であったような気がするのだがこれいかに？これを観て、「あぁ、久保チンもまだまだ安泰だ」なんて思ってしまった。なんなんだこの安堵感抜群の映画は（笑）。

話をピンク初出演女優さんたちに戻す。

主人公の妻/冨田じゅん：
いやぁ～、すっばらしい。役にドンピシャ！ピンク初出演だとはとても思えない。こういうドタバタ人情ものを"出来る"女優さんってほんと貴重だ。池島ゆたか監督あたりと、「未亡人下宿」新シリーズみたいなのを是非やって欲しい！

謎の女（眼鏡っ子）/松井理子：
冨田さんをホメたシリから恐縮なのだが（笑）、すっごく良かった冨田さんよりもさらにホンの少しイイ、それくらいすっばらしかった。雰囲気ありますよ！この女優さんは。僕はこの謎の女の正体に対し、単純に「それかい！」ってツッ込んでしまいました（笑）。

アホ（笑）/瀬名りく：
ネットで本作に関するいろいろな人の感想を読んでいると、なんだかこの瀬名りくは賛否両論を呼んでいる感じなのだが、何のこたぁない、超イイっす（笑）。というか、この瀬名りく登場シーンのわけのわからなさ、意味のなさがあって初めて本作の異常度も増すってもんです。瀬名りくがいない「となりの人妻 熟れた匂い」なんて、クリープのないコーヒーもようなもの。そこら辺気付こうヨ！ｗ


おトモダチのSHINさんのブログからこっそりパクってきた写真（ごめんね！ごめんね！）。左から松井理子さん、冨田じゅんさん、なかみつせいじさん


　希望の星・瀬名りく

例によってストーリーを追うこともなく、ハタから見るとなんのこっちゃな感想となってしまいましたが、タイトルに惑わされるな！面白い映画だよ！ということだけは間違いなく言えます。皆さんの街にこの映画が回ってきたら、是非足を運びましょう。


おわり