- 現代、日本を代表する総合商社と言えば、
- 三菱商事、住友商事、三井物産 といったところでしょうか。
日本の港がひらかれた明治から昭和のはじめにかけて。
世界との繋がりが再会した頃から、神戸でメキメキと力を伸ばし、
一世を風靡した商社は、鈴木商店でした。
私の父方の親類が、この鈴木商店と関わりが深かったとのことで、
この本に興味を持ちました。
- お家さん 上巻/玉岡 かおる
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鈴木商店のもともとの主は、鈴木岩治郎でしたが、彼の死後に有力な番頭たちとともに店を支え、
発展させ、のちのち語り継がれるほどの事業にしたのは、あとに残された未亡人の鈴木よね。
お家さん と呼ばれた彼女の役割とは・・・・
その信念とは・・・・
現代と比べると、女性の一生はずいぶんと周りの男性次第になることが多い時代です。
子供の頃は父親に庇護され、
大人になれば夫に庇護され、
夫に先立たれれば、実の兄などに後ろ盾になってもらう。
結婚そのものも、当人同士の恋愛感情よりも、家や周りの有力者の意向次第。
今を生きる私たち世代から見ると、なにやら鬱陶しいことが多そうで、
自分の意志は、どうなるの?
など、言いたくなりそう。
だけど、不思議、不思議。
この小説に出てくる女性たちは、それほど惨めにも、気の毒にも思われません。
それぞれが自分の役割に生き甲斐を見出し、激しく変化していく社会で活き活きと暮らす様子が
描かれています。
それまで閉じていた日本が、世界に出て行く過程では、
政治に携わる人間だけではなく、商売人も、女性も、歴史の中の大きな役割を果たしていたのだ、
と思います。
主人公のよねも、表立って鈴木商店を引っ張ったり、商談をまとめるという役割をするのではないものの、
彼女にしかできないかたちで、信念を持って、「お家さん」として店のかなめであり続けます。
日清戦争で、台湾が日本の統治下に入った頃。
鈴木商店はいち早く、台湾に新しい商売の種をまき、種を探しに乗り出していきます。
もともと樟脳を主力取り扱い商品としていた鈴木商店は、
台湾のクスノキによる樟脳生産に目をつけます。
そのあたりのお話には、行ってきたばかりの鳥来だの、阿里山だの、北投温泉だの、
馴染みのある土地が次々に登場し、意外なところでこの本と、もともとの意図とはもう一つ別の縁を
見出してしまいました。
残念ながら、上巻を読み終えたところで、再び日本をあとにし台湾へ向かった私たち。
台湾の太魯閤公園の山で、クスノキを見つけましたよ!
下巻は、次の帰国時にまた実家でゆっくり読もうと思っています。