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寄り道ついでに、もう一本映画記事。
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決まりです~
今年のアカデミーで一番応援したい映画が!!
最多部門にノミネートされている中、作品賞と主演男優賞は、この映画とコリン・ファースにとって欲しい!!
イギリスの王室に詳しい方なら、国王ジョージ6世の人となりや
その生涯について、様々な知識をすでにお持ちかもしれません。
私は、イギリスの王室のことに、あまり興味を持ったことがなかったので、
王位を継承するに当たって、このような葛藤があったとは、知りませんでした。
ローヤル・ファミリーに生まれたとはいえ、長男と次男では立場が初めから全く違うもの。
次男坊のバーティは、いつも国王である父親と、将来の国王となる兄の影の存在だった。
ところが、父王が亡くなり、王位を継承するはずの兄は、スキャンダラスな女性関係のために
国王の座を放棄。
降って湧いたように、イギリス国王の座につく羽目になったバーティ(コリン・ファース)。
ですが、彼にはイギリス国民や、当時植民地として支配していた世界各地の人々をひとつにまとめていく
そんな大仕事を引き受けるだけの心の準備など全く出来ていません。
自分が国王になれる人物であるという自信さえ、育ててもらってこなかったのです。
中でも、話をしようとすると言葉が出てこなかったり、どもってしまったりする幼い頃からの癖のために、
国民への演説が必須となる立場など、
彼にとっては、大きなプレッシャー、頭痛の種・・・・・
王の仕事の大切なことは、政治的な決断や外交手段を決定するのではなく、
声を届けることによって、国民の心をひとつにしたり、勇気を鼓舞したり、力を持たせたり、すること。
その一番大事な「声」が、一番苦手なことで、
しかも他の仕事と違い、適性が合わないからといって、転職するわけにもいかないのですよね・・・・
苦しむ夫を助けたいと、妻(ヘレン・ボナム・カーター)が探し出してきた一人のスピーチセラピストは、
一風変わった男だけれども、今までのどんな医者とも違ったアプローチで、国王の治療を始める。
彼(ジェフリー・ラッシュ)は、バーティのことを特別扱いしたり、距離を置いたりすることなく、
一人の人間として理解し、友情を育み、心から支えていくことになる。
コリン・ファースの国王役に、半信半疑でしたが、
とても見事な演技でした。
彼には、王を演じられるだけの「品」がありますよね。
ローヤルファミリーに生まれたと言っても、十分に愛情を受けられる環境でなく、常に父や兄の存在に
隠れるようにして育ってきた、抑圧されたバーティの寂しさや苦しみ、
妻や娘達への優しい愛情などを、十分に演技で見せてくれました。
何もかもに自信を持った「俺様、王様!」な人物ではなく、
コンプレックスや、孤独感、疎外感、そんな色々な思いを自ら抱いているからこそ、
結果的には、国民に信頼を寄せられるだけの国王になれたのでしょう。
時代も時代。
ドイツではヒットラーが台頭して、第二次世界大戦に向かう頃です。
国王としての重圧には、大変なものがあったことでしょう。
スピーチの苦手な彼が、ヒットラーの演説ぶりを見て、
何を言っているのかはわからないなりに、聴衆の心に訴える上手さに感心する場面があります。
困難な時代こそ、人々はリーダーの強いメッセージや、力強い声を求めるのですね。
国王のスピーチ放送に、国民が町のあちこちで、真剣な表情で耳を傾けています。
現代のように、テレビやらインターネットやら、至る所であらゆる人が、
色々なことを大声で、好きなだけ喋っている時代と違い、
当時、国民全体に声を届かせることの重みがあらわれていました。
ベートーベンの音楽が、一層、緊張感を盛り上げます。
国王本人、そして彼の周りのあらゆる人々と同じような気持ちで、手に汗を握ってドキドキしました。
私、どちらかというとドロドロした暗いつらいドラマが個人的に好みだったはずなんです。
たとえば、ブラック・スワンの系統ですね。
それが最近どうも、素直なほっとするお話の方に惹かれてしまう傾向。
(もしかして、これは、疲れているのか?? 歳のせい??)
「英国王のスピーチ」は、その最近の好みにまさにぴったりの、
正統派、心が温まる素敵な映画でした。