タランティーノ監督の新作ということで、日本での11月の公開を楽しみにしている方も多いと思います。
せっかくのお楽しみを半減してしまいたくないので、内容に触れすぎないように注意しつつご紹介。
イングロリアス・バスターズは、今までの彼の作品同様に章立てで話が展開していきます。
第一チャプターは、牛が草を食むフランスの酪農地帯で始まります。
美しい娘が、真っ白なシーツを洗濯紐に干して、そのシーツがパタパタとはためく。
父親は、汗だくで木の切り株を斧で割っている。
のどかな光景に、進入してきたのがナチス親衛隊の一群。
危機感を持つ親子と同様に、私たちも嫌な予感がします。
新鮮な絞りたての牛乳を飲みながら、いかにものんびりと会話をしているようでありながら、
このナチ将校ハンス(クリストフ・ヴァルツ)の穏やかさやフレンドリーな雰囲気は、表面上のものなのだということがわかってきます。
とても冷静に冷酷に、その鋭い嗅覚を発揮して、有能な「ユダヤ・ハンター」であることが、印象付けられます。
この監督は、嵐の前の静けさを表現するのが、上手!
これから何か、とんでもないことがおこる
とんでもなくおそろしいことが、決定的な何かが、すぐそこに迫っている緊迫感
が、画面から迫ってくるのです。
さて、タイトルになっている「イングロリアス・バスターズ」というのは、ユダヤ系アメリカ人の反ナチス部隊。
フランスでナチス親衛隊を襲い続け、その残酷な手口が恐れられるようになる・・・・
いかにも垢抜けない、南部の田舎出身の単細胞といった人物をいい具合に演じています。
後半、白いタキシードでかっこよく正装したシーンがあるのですが、そこでの無能ぶりときたら!!
ほんと、笑わせてくれます。
ナチスのハンス将校の、いかにも頭が切れて洗練されてスマートな雰囲気と好対照。
ハンス将校のもたらすインパクトには、ちとかなわないかもしれないけれど、ブラピのこういう演技、好きだな~
ベンジャミン・ボタンよりも、ずっとずっと味がありますよ。
密かにナチスへの復讐を企てる、ユダヤ美女あり・・・・
スパイ美女あり・・・・
たくさんの登場人物の中、印象的なこの二人の女性の存在感は大。
嵐の前の静けさで、ドキドキ緊張感を味わった後の、
爆発するようなシーン。
暴力的なシーンも、残酷なシーンも数々あるけれど、この監督の描く暴力には嫌な後味が残らないのが不思議。
どこかコミカルな描き方なんですよね。
あちこちで絶賛されているとおり、たっぷり映画らしい楽しみを味あわせてもらえて大満足の一本でした。