本* ブロークバック・マウンテン | 有閑マダムは何を観ているのか? in California

有閑マダムは何を観ているのか? in California

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インドア・アウトドア共に楽しみたい私の発見記録です。 

ワイオミングを舞台に、2人のカウボーイの同性愛を描いた、2005年にアメリカで公開された映画「ブロークバック・マウンテン」。

週末のアカデミー賞授賞式目前に、ますます注目を集めている模様。


このようなテーマがアメリカでそんなにも受け入れられ、評価されていることには、ちょっと驚きです。

ゲイの結婚が認められるとか認められないとか、ずいぶんとサバサバものわかりよくゲイを受け入れているかのように見えるところもあるけれど、キリスト教徒が主流であるアメリカでは、非常に風当たりがキツイ部分もあるのです。

「生理的に気持ちが悪い」、とか、

「おかしな奴だ」、と見られるだけでなくて、

「人間として、あるまじき姿」 として憎悪の対象にもなるのですから。


一体どこがどのようによい映画なのか、金曜日に観に行く予定なのですが、昨日たまたま立ち寄った書店で原作本を見つけ、衝動買い。

一気に読んでしまいました。

55ページの短編で、ワイオミングの雄大ながらも厳しい自然の情景が、大げさでない抑制の効いた文体で描かれます。

その中で学問をつんだこともなく、洗練とは程遠く、粗野で貧しく、カウボーイになる以外に人生をどう生きたらいいか考えられないような2人の愛について、無駄なく簡潔に、しかし十分に語られています。


Annie Proulx
Brokeback Mountain

例えば、この2人が男同士ではなくて、男と女であっても、さまざまな理由で関係を築いていくことが困難な場合もあるでしょう。

どちらかが既婚であるとか、ロミオとジュリエットのように家柄が違うとか。

でも、男同士であったゆえに、葛藤の深さはロミオとジュリエットどころではないのですよね。

自分達の仲を裂こうとする周りを恨むだけではすまない。

60年代、70年代で、しかもカウボーイとして暮らしているようなマッチョな世界でのゲイの存在は、今現在の比にはならないほど、表に出来ないものだったでしょう。

子供の頃から、ゲイは唾棄すべきものという価値観の時代と環境で育ってきた自分が、こんな関係に足を踏み入れてしまったことは、非常に困惑せざるを得ない。 

認めたくもない。

けれど、自己否定をして、あるべき姿の自分の生活に戻ってみたところで、忘れられるわけもない。

過去の一点で経験した輝かしい時間と、今の自分のつまらない現実とのギャップがひろがっていくばかり。


この、簡潔に全てを言い表した短編を、どのように膨らませ味付けして2時間の映画が作られているのか、

楽しみです。