日本の階層格差が拡大し、今後はますます拡大。
上流=15% 中流=45% 下流=40%
これからの社会では、上昇する意欲と能力を持つものだけが上昇し、それがない者は下降していく。
そういう時代を前にして、若い世代の価値観、生活、消費は今どう変わりつつあるのか。
- 三浦 展
- 下流社会 新たな階層集団の出現
自分の生活ベースが日本でなくなってから10数年経つので、日本が下流化しているなどといわれても、正直ぴんときません。
たまに帰国すると、サラリーマンは満員電車で通勤、みんな今時の流行に敏感におしゃれして闊歩しているし、おいしいものやかわいいものを追い求める人々の姿が目に留まり、経済も意欲も下降しているとはとても見えなくて。
しかし、シンガポールの新聞でも、
日本の経済格差のこと、
それに対して、国民が抱いている危惧と政府の経済対策に対する疑念、
小泉首相の見解、
それらが記事になっているほどなので、読んでみたわけですが・・・。
<社会全体・国レベルで考えると>
上流が15%いるならば、まあとりあえず今までどおりのいわゆる「エリート」国を動かすレベルの人たちの人材は足りるのではないでしょうか?
しかし、それを支える「縁の下の力持ち」的存在の中流が、どんどん下流に流れていってしまうと、これは問題。
方針を決めて、指示を出すものはいる。
しかし実行するものがいなくて、そこらにいるのはダラダラやる気のない下流ばかり。
これから国を発展させようと勢いづいている中国やインドのような国とは、どんどん国力が違ってきてしまうかも。
またエリート層の人たちの一般市民をみる目が、今までより更に険しいものなり、
「ほんまに、こいつら、どいつもこいつも役にもたたん、能無しばっかしで。
一生懸命働いてる俺らは、なんやねん!!
腹立ちまぎれに、もっととことん搾取してやる!!」
といった気持ちになってしまい、一層格差が広がるという悪循環のサイクルに陥るのかも?
<個人レベルで考えると>
著者は、
「俺は、ダラダラしたやる気のない奴らは嫌いなんじゃー!」
「いい若者が、ひきこもったり、決まりきった半径数キロ以内の行動範囲をウロウロ満足してるなんて!
もっと外に出て行こうという気はないのか!!」
そんな発言はしていないのですが、「下流」と定義する若者達に対する危惧を強く感じました。
私自身、休日にソファーでごろごろ一日中寝そべってテレビを見ているような人より、もっとシャッキリ・イキイキ・意欲や覇気のある人のほうが好きなので、勝手に三浦氏の心情をそのように読み取ってしまっているだけなのかもしれません。
でも、日本全体が、たくさん働いてたくさん稼ぎ、少しでも豊かになることを一丸となって目指していた時代とは違い、それぞれの求める生きる目的や人生の楽しみが多様化していくこと自体は、別に悪いことだとは思えないのです。
ガツガツと働いて、あれもしたいこれもしたい!とあくせく忙しく奔走する毎日を送る人が、必ずしも幸せな人とはいえないですから。
本人がそれなりにひっそりと楽しみをもって満足して生きているなら、それはそれでいいのでは? とも思います。
何歳になっても親に経済面でも生活面でもおんぶに抱っこで、自活さえ出来ないまま、
「私は、いつか蝶になって羽ばたくのよ。」
と見果てぬ夢を見続ける、一生モラトリアムな人は問題だと思うけれど。
とりあえず自分の力で生活しているのなら、何も私や三浦氏からイライラされる筋合いはないわけで。
国レベルで見ると、下流化は問題だとしても、
「中国に負けるわけにはいかないから、お国のために、いっちょダラダラ生活をやめるか。」
と考える人はいないでしょう。
著者が危惧しているように、
所得格差が広がり、そのために学力格差が広がり、結果、階層格差が固定し、流動性を失っている
そのことが、一番問題。
たとえ、たまたま裕福でない家に生まれたとしても、本人次第では上昇することが出来る方が良いに決まっています。
本の最後に、そのための改善対策案がいくつかあげられていますが、果たして実行されることがあるのかどうか??
それにしても、何か納得できるようで納得できないような、釈然としない読後感が残りました。
というのは、著者が仮説を立てて検証する元になっている、本書でたくさん示されている統計。
あまりにも対象が少なすぎ。
階層意識について調査するのに、50人や100人にきいてみたところで、それを全体にあてはまる傾向だと言えるのか?
一体どういう基準のサンプルを選んだのかも不明だし、この統計結果は下流と定義された人々の意識を正しく把握するものとして、説得力をもつでしょうか?
経済格差が広がる傾向が続いていることは事実だとしても、その背景にある
上流=意欲が高い人、
下流=ダラダラしている、何事にも意欲のない人
という図式は、必ずしも事実かどうか?と私の中には疑問が残ったままです。