相武紗季「グリコほわわ」:平均律と五度圏
J.S.バッハ J.S.バッハ平均律クラヴィア曲集―ブルーノ・ムジェリーニ版 (第1巻) |
9月13日発売されたグリコの新チョコスナック「ほわわ」。出演するのは「ミスター・ドーナツ」などでダウン・トゥ・アースな魅力を展開してきた相武紗季嬢。「ほわわで夢ごこち篇」(コチラで視聴 )の音楽は、リコーダーとウクレレだけの非常にシンプルな構成。キーはEメジャー。
コード進行は Ⅰ-Ⅳ 定番、Ⅰ-Ⅳヴァンプだ(参照 )…、と書いて終わるのも、筆者も読者諸兄も厭きてきただろうから、今後ちょっと新展開していく。そもそも、Ⅰ→Ⅳ、完全四度上昇とは何なのだろうか? 最近、自分の音楽理論に限界を感じ、音楽の教授、野村良雄著「音楽美学」をじっくりと読み始めた。この本はかなり面白いので(←)Amazon、楽天で欠品していた場合、是非古本屋などで探してみてほしい。 そもそも、ⅠとかⅣとかⅤとかという概念は、16世紀バッハの「平均律クラヴィア曲集」により纏められ、18世紀以降音楽理論で支配的なものとなった平均律理論の上に成り立つものであると、野村氏は「第二章音楽の形式/第二節音組織」のなかで述べている。 平均律は1オクターヴを平均に12等分する理論。ここから、西洋音楽の主要組織となる五度圏が生まれる。 Cメジャー(ハ長調)から完全五度上昇を続けるサイクル、 C-G-D-A-E-B-F#-Db-Ab-Eb-Bb-F-C のことだ。ギター、ベースなど弦楽器では、基本細い弦から一つ太い弦に平行移動することで、この五度圏を表現できる。12音を全て通るともう元のCメジャーに戻る。バッハはこの12種類のキーのために、それぞれ2種類のプレリュードとフーガを書いた。それが「平均律クラヴィア」である。「音楽の旧約聖書」と呼ばれる所以はここにある。 1つの音というものは、 完全五度上昇←1つの音→完全五度下降(完全四度上昇)
ソ←ド→ファ Ⅴ←Ⅰ→Ⅳ ということだ。この五度圏サイクルにおいて、 ・上向(=完全五度上昇)は緊張・明瞭・拡大 ・下向(=完全四度上昇)は弛緩・暗・縮小 を歴史的に意味してきた、と野村氏は述べている。さて、この視点から見ると、Ⅰ-Ⅳ-Ⅰヴァンプは、 Ⅰ→Ⅳと完全四度上昇して、弛緩な気分 例:ほわわ食べて(Ⅰ)→ほわわー(Ⅳ) Ⅳ→Ⅰと完全五度上昇して、緊張気分、衿を正す。 の繰り返しであると考えられる。まさしく五度圏サイクルの賜物なわけ。アーメン終止、ゴスペルのⅠ-Ⅳヴァンプにも全く同じことが言えると思う。 念のため断っておくが、所詮音楽理論は後追いの理論でしかない。音が存在して、それを解釈したり、模倣するために作られた学問だ。その模倣・解釈の術として、歴史的に理論を追っていくことはかなり興味深い。念のため、野村良雄氏、ヨッちゃん(参照 )ではない。 ■関連リンク:グリコほわわCM |