ブルースコード進行 | 牧歌組合~45歳からの海外ミュージシャン生活:世界ツアーに向けて~

ブルースコード進行

ギターやベースを始めたら人は大体最初に12小節のブルースコード進行を勉強する。スリー・コードっちゅうヤツだ。ロック、フォーク、ブルース、ソウルから入った人は以下のパターン。(キーはC)

【A】ブルース系

| C7|F7|C7|C7|

|F7|F7|C7|C7|

|G7|F7|C7|G7|

| Ⅰ7|Ⅳ7|Ⅰ7|Ⅰ7|

|Ⅳ7|Ⅳ7|Ⅰ7|Ⅰ7|

|Ⅴ7|Ⅳ7|Ⅰ7|Ⅴ7|

しかし、ジャズから入った人なら以下のパターン。 コードチェンジ時のⅡ→Ⅴなどは省略、骨格としてのコード進行に抽象化してあります。

【B】ジャズ系

| C7|F7|C7|C7|

|F7|F7|C7|C7|

|Dm7|G7|C7|G7|

| Ⅰ7|Ⅳ7|Ⅰ7|Ⅰ7|

|Ⅳ7|Ⅳ7|Ⅰ7|Ⅰ7|

|Ⅱm7|Ⅴ7|Ⅰ7|Ⅴ7|

同じものに見えるが、注目すべきは9~10小節(3行目)。【B】の9小節目Dm7はFの代理コードだから、|Ⅳ|Ⅴ7|Ⅰ7|Ⅴ7|と解釈できる。そうすると、

【A】の9~11小節 Ⅴ→Ⅳ→Ⅰ

【B】の9~11小節 Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ

となってしまう。「これ、別物じゃないですか、同じブルース進行といいながら!」。

(コントラバスの)師匠、応えて曰く。「それが、アーメン終止オジギ終止の違いなのじゃ。極論、音楽はこの2種類しか存在しない」。


【B】はⅤ→Ⅰで終止しており、完全終止(オジギ終止)と呼ぶ。
【A】はⅣ→Ⅰで終止しており、変格終止(アーメン終止)と呼ぶ。
ジャズの楽曲の根本形成史において、白人ユダヤ系移民の貢献が大きいと思うが、彼らは結構音楽的教育を受けており、楽理についても詳しかった。よって、【B】のパターンでは、Ⅱm→Ⅴ→Ⅰという、和声進行的に完全に理に適った終止が用いられている。洗練された都市のイメージ。

一方、黒人教会で醸造されたゴスペルは、和声学の学理とは全く違う文脈。アーメンはヘブライ語で「アーマン(=確かに)」の意。いつから始まったのか解りませんが、昔から賛美歌は基本的にアーメン終止。ブルース→フォーク→ロックの歴史はこの文化を継承している。ゴスペルで見られる「アー(Ⅳ)メン(Ⅰ)、アー(Ⅳ)メン(Ⅰ)」を繰り返しまくると、R&B、ソウルの根本「Ⅰ→Ⅳヴァンプ」ができあがり。都市と反して、土着のイメージ。


時代考証的には【A】が(賛美歌として)元々のルーツで、それを西洋和声学的に無理やり解釈したのが【B】なのかも知れない。ここらへんはマジで考察していきたいっすね。↓一応、個人的に好きなブルース曲と、パタンの違いをリストアップ(Amazon 試聴可結構あります)。


【A】ブルース系

Robert  Johnson/Sweet Home Chicago
Alexis Korner/ I Wonder Who

Duke Ellington/Things ain't What They Used to Be

ダウン・タウン・ブギウギ・バンド/スモーキン'ブギ
森高千里→ミニモニ/ ロックンロール県庁所在地

【B】ジャズ系

Sonny Rollins/Sunnymoon for Two

T-Bone Walker/Stormy Monday Blues
Duke Ellington + John Coltrane/Take the Coltrane

Kenny Dorham/Blue Spring Shuffle Watler Bishop Jr./Bluse in Closet
ブルースでも、T-Bone Wlaker のテキサス・スタイルはジャズ理論を使うのがミソ。 ジャス系のミュージシャンでも、デューク・エリントンは「土着=アーメン終止」を使い分けるところがミソ。

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