Outkast "Hey Ya" のコード進行
「音楽の基本はⅠ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ 、その変形に過ぎない」と言われても「いや、他のコード進行もあるよ。たとえばこの曲なんか…」と思われる方々も多いと思う。実際私もそうです。特に疑問だったのが、
|C |D |E |E |
のようなコード進行。身近なところでは…(ちょっと即、最適な例が見つからないが)たとえば、Frank Zappa の「Let's Make the Water Turn Black」 や、 Claire Hamill「Crying Under the Bedclothes」 などで使われている(超有名な例がみつからず、すみません)。
ギターをお持ちのかたはC→D→Eと弾いてみてください。結構色々な曲でこの進行が使われていることが解るはずです。キーはGと捉えるべきですが、和声学の基本から考えると、EはEmになるはずでは? なぜ、このコード進行が普通に聴こえるのだろうか?? で、MTVで最近(?)よく流れていた Outkast の「Hey Ya」ってゴキゲンな曲もこのコード進行が入っています。
◆Outkast/Hey Ya
キーはGで、以下のコード進行の繰り返し。
|4/4 G |C |C |2/4 D7|4/4 E7 |E7 |
注:基本は4/4拍子ですが、4小節目だけ2/4拍子になっています。
この進行をローマ数字に書き換える(+変拍子を無視する)と、
|Ⅰ|Ⅳ|Ⅳ|Ⅴ7|Ⅵ7|Ⅵ7|
つまり、Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ7→Ⅵ7。気になる部分はやはり、Ⅵ7の存在です。
まずはⅤ→Ⅵ進行は、Ⅵmとした場合、Ⅵm=Ⅲm=Ⅰ代理なので問題ありません。
次に、何故Ⅵmであるはずのものがメジャーになっているのか? ドッペルドミナント化してⅥ7に(参照:バッハのプレリュード )なった、と考えるのが妥当です。ですが、ドッペルドミナント化されたとすれば、Ⅵ7はⅡm7→Ⅴ7→Ⅰと進行するはず。これら(つまり、Am→D7)を一瞬交えてみると、問題なく進行できるので、ツーファイブが省略されたことで、Ⅵ7→Ⅰ進行していると考えられます。結論、
ドッペルドミナント・コードを利用、かつツーファイブ省略による違和感を演出するコード進行
、とまあ理論的に説明をつけることも可能だと思います、理論至上主義に陥るのもよくないことですが。
理論は結局は音楽を楽しむための道具に過ぎません。最後に、Johnny Vulture のアコースティックギターによるカッティングをプレイして、このコード進行を味わいましょう。
4/4 2/4 G C C D7 + + + + + + + + + + + + + + e:-3---3-3-X-3-3-3-|-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-|-2---2---| B:-0---0-0-X-0-0-0-|-1---1-1-X-1-1-1-|-1---1-1-X-1-1-1-|-1---1---| G:-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-|-2---2---| D:-0---0-0-X-0-0-0-|-2---2-2-X-2-2-2-|-2---2-2-X-2-2-2-|-0---0---| A:-2---2-2-X-2-2-2-|-3---3-3-X-3-3-3-|-3---3-3-X-3-3-3-|---------| E:-3---3-3-X-3-3-3-|-----------------|-----------------|---------| 4/4 E7 + + + + + + + + e:-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-| B:-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-| G:-1---1-1-X-1-1-1-|-1---1-1-X-1-1-1-| D:-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-| A:-2---2-2-X-2-2-2-|-2---2-2-X-2-2-2-| E:-0---0-0-X-0-0-0-|-0---0-0-X-0-0-0-| 注:「+」記号を一拍(四分音符)と考えてください。「X」は消音カッティングです。
ギターのポジションは以下の4つだけでOK。
G ==●= ==== ==== ==== =●== ==●= 1234 フレット |
C ==== ●=== ==== =●== ==●= ====× 1234 フレット |
D7 =●== ●=== =●== ==== ====× ====× 1234 フレット |
E7 ==== ==== ●=== ==== =●== ==== 1234 フレット |
是非曲にあわせながらかき鳴らしてみよう。気持ちいいですよ。
しかし Outkast はいいバンドだなぁ。70年代ファンクの最もオモロイ部分、ブーチーズ・ラバーバンドを思い出してしまう。最高。
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