日本が借金だらけでまずい、老人だらけで活力が無い、人口減少でビジネスに伸びしろが無い、だから海外に打って出なさい、海外で戦える人間になりなさい、若者よ!という話や本を良く見ます。

 

私は素直に打って出たのですが、その結果思うことは、ほとんどの日本人にとって海外移住は無理なのではないか?という事です。

 

ここシンガポールでは、日本人が3万人を超えると言われていますが、9割近くは企業の駐在員です。主に奥様(所謂「駐在妻」)が輝く都市であり、安心、安全な先進国での楽しい駐在生活を聞かされた事のある人も多いかもしれません。

 

まず駐在員は移住とは全く異なり、企業から住居費、教育費、車などの厚い手当を受けて暮らしているため、日本に居るときより基本いい暮らしができます。この記憶を持ったまま、日本で職を無くした方や定年の方が海外での転職活動時に同様の条件を求めて譲らず決まらない例がままあると聞きます。本人の市場価値はそこまで無いのです。

 

私が海外に出るときに海外経験のある人に教えを乞おうとした所、親切な人がたくさん「何でも聞いて」と言ってくれました。非常に有り難かったのですが、結構多かった「留学経験者」もまた移住とは違うという事に実際に行く段になって分かったのです。

 

それまでは賢い彼らに聞けば問題ないと思っていたのですが、保険の話を聞くと「それは学校が提供してくれるから…」、ビザの話を聞くと「学生ビザだから…」、クレジットカードも収入基準の話は通じず、住居や待遇のレベル感、現地日本人社会の話までかみ合う事はありませんでした(気持ちは本当に有り難かったのですが)。

 

考えてみれば当たり前だったのですが、多額の学費を落としてくれる学生は国にとってお客様。高待遇で迎えるのが当たり前であり、稼ぎに来る人間と同列のはずがありません。教育という面ではほとんど鎖国している日本では想像できなかったのですが、海外からの留学生というのはほとんどの国にとって上得意様だったのです。

 

駐在員も学生も違うとなると現地採用で働いている人になるのですが、これが少ない上、現地の人と婚姻関係にある人、起業家マインドを持った会計士やレストラン関係者などを除くと普通に企業で働く日本人などは未だにほとんど居ません。

 

日本は優秀な人材を日本国内に囲い込むためにわざと英語教育を充実させないできたのではないかと最近は思っています。それほど日本人は(韓国人とともに)英語が下手で有名。それに加えて保護された環境以外で海外経験をした事のある人もほとんど居ない。海外出張がいくら多くても実際に暮らすのは全く別です(高級ホテルに自費ですみ続ける人もほとんど居ないでしょう)。

 

マレーシアやオーストラリアでリタイアメントビザで暮らす夢を持っている人も居るかもしれませんが、有名経営者や金持ち達が、自分のカネは何とか海外に逃がそうとあの手この手を尽くしている一方、日本に住み続けるのは何故かを考えてみたことがありますか?リタイア後海外移住した方が結局日本に戻って来てしまうのが何故か?

 

結局勝手知らない国で、誰からも保護されず、自力で生活を続けるのは、ほとんどの人には無理って事です。それも、日本ほど快適で楽しい国は無いですよ、日本人にとって。

 

と、いうことで、全体として国が衰えても、死んだ目をして電車に揺られていても、このまま金持ちも貧乏人も若者も老人も、日本に居続けるし海外なんか旅行か、駐在か、留学で行くだけでしょう。日本経済が崩壊しない限り(しないでしょう)。