魚は健康に良いと言われています。現に魚の油(特に青魚)から精製された薬が、高脂血症や閉塞性動脈硬化症の治療薬(エパデール)として多くの医療機関で使用されています。このエパデールはイワシの油から精製されたものです。

では、なぜ「魚の油」はよくて「動物の油」はダメなのでしょう?

ひとつは脂肪酸の融点の違いにあります。融点とは個体と液体が平衡を保って存在する温度。融点より下がれば個体は融解して液体となります。

ヒトの体温は36~37℃、ウシやブタの体温は39℃、魚の体温は10~20℃。ウシやブタの体温は39℃ですから、この温度で液体となっている飽和脂肪酸が大部分を占めています。体温が37℃の人間がウシやブタの脂質をたくさん食べると、この飽和脂肪酸が液体から固体に変わり血管に蓄積することになります。

逆に魚の体温は10~20℃。魚に比べてヒトの体温は高すぎるため、魚を素手で触ると触れた部分を魚は火傷してしまうのだとか。魚の油は融点の低いEPA(エイコサペンタ酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった不飽和脂肪酸を多く持っており、ヒトの血管内でも液体のまま存在します。人体に入った魚油は、血管に付着している飽和脂肪酸を溶かして洗い流して血管を掃除する働きがあるとされているのです。

ヒトとウシやブタ、魚はそれぞれ体温が異なるため脂肪酸の融点も異なります。融点の違いにより、人体内で魚油は血管内でも液体のままですが、「ウシ」や「ブタ」など「ヒト」より融点が高いものは血管内では固体になります。魚の油が身体に良いのは融点の違いにあるようです。