ダライ・ラマ、高野山で科学者らと語る
[11月3日] 高野山大学講堂でのディスカッションのトピックは細胞の遺伝情報から複雑な法身仏の概念まで多岐に渡った。この日、ダライ・ラマ法王は、人間の知性の優秀さを表す科学と宗教という2極に踏み込み、自身の考えを整然と語った。
日本で最も聖なる場所の1つ高野山での最後の滞在の日となったこの日、ダライ・ラマは2つのセッションを行った。1つは日本で先駆的な研究を行っている科学者との対話であった。もう1つは真言宗の奥義を何世紀にもわたり育んできた高野山大学の最も仏教を学んだ教師たちとの対話であった。
著名な物理学者佐治晴夫氏、東京のソニーコンピュータサイエンス研究所特任研究員ナタリア・ポロウリアク女史、脳科学者茂木健一郎氏と、ダライ・ラマは現代科学と仏教科学に関するディスカッションを行った。ダライ・ラマは発表者の発表に耳を傾け、質問に応じた。
ダライ・ラマは、独立した絶対的な現実が存在しないという仏教哲学を説明しながら、相互依存の概念がなければ、時間というものの性質は正確に記述できないと語った。
「内観すれば、時間は独立した存在ではありません。過去は記憶であり、未来はまだ先のことです。そのため、現在がとてもとても重要なのです。」
「適切で意味ある方法で時間をつかうこと。これが最も重要です。」
予定時間をオーバーしたディスカッションの後、佐治晴夫氏は、ダライ・ラマの考えと「洗練された知識」を聴衆と共有できたとしてダライ・ラマに感謝の言葉を述べた。
「あなたのお話を伺うことができて、自分の分野でさらなる研究を行う意欲が湧きました。」
このセッションの後、ナタリア女史は、仏教科学と実践生物学の間に密接な関係があることに驚いたと語った。
「ダライ・ラマのお話を聞いて、私達の幸福や怒りといった感情が直接健康と関係しているという結論に達しました。」
午後、ダライ・ラマは125年の歴史を誇る高野山大学の藤田光寛学長率いる大学関係者と会談した。
ダライ・ラマは、日本人仏教徒の「熱心さと真剣さ」に感謝し、日本とチベットの仏教の教義の比較研究を行う広範な共同プログラム設置のアイディアを披露した。
「みなさんは興味がおありのようです。教義の研究に関する詳細かつ広範なディスカッションを高野山大学の教授とインドのチベット人との間で始めなければなりません。」
「みなさんの真剣な姿勢を長期的な行動に移し、未来の人たちの役に立つようにしなければなりません。」
チベット本土には宗教の自由がなく、60年以上にわたりチベット人は難民として苦労して生きてきたが、チベット人コミュニティは何世紀にもわたる知識を「そのまま」維持している、とダライ・ラマは語った。
アジアの伝統的な仏教国の間で知識を共有することの重要性を強調しつつ、ダライ・ラマは、将来「幸福な世界」をつくるのに、13億の人口を持つ中国が重要な役割を果たすと語った。
「健全な仏教国をつくることで、健全なアジアが生まれ、健全なアジアから健全な世界が生まれます。」
高野山を再度訪れてほしいという大学からの申し出に応えながら、ダライ・ラマは、怒涛の拍手をする観衆に対し、「私は真の愛、親切、思いやりをみなさんから受け取りました。またここに来ます。」と語った。
ダライ・ラマは、4日、3月の津波で最も大きな被害を受けた場所の1つ仙台を訪れる。
【拙訳】
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