不当逮捕されているチベット人映画監督の奥さんの話 | チベットとビルマの難民支援 難民支援NGO"Dream for Children"公式ブログ

不当逮捕されているチベット人映画監督の奥さんの話

"Leaving Fear Behind"という映画があります。

この映画は、北京五輪直前にチベット本土で撮られた映画です。

チベット人映画監督ドンドゥプ・ワンチェン氏が、北京五輪および中国の政策に対するチベット人の想いをインタビューした映画です。


この映画の撮影を終えてすぐ、ドンドゥプ・ワンチェン氏は、中国当局に逮捕され、昨年12月に国家分裂扇動罪に問われ、懲役6年の判決を受け、現在服役中です。



最近、ドンドゥプ・ワンチェン氏の奥さんラモ・ツォさんのお話を聞くことができたので、ご紹介します。


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 私の夫が逮捕された理由は皆さんに見ていただいた通りです。私の名前はラモ・ツォ、ドンドゥプ・ワンチェンの夫です。夫と私は東チベットのアムド地方の出身です。私たちは学校に行ったこともなければ教育を受けたこともありません。




 私たちには4人の子供がいます。夫は逮捕される前、子供たちに教育の重要性を説いてきました。チベット人が現在の苦境から抜け出すには教育しかないからです。また、夫は、教育のみならず、人間としてのモラルを持った立派な人になるようにと子供たちに言っていました。




 夫には10人の従兄弟がいます。彼は、従兄弟たちと70歳になる母親を愛していました。それでも、夫は彼の信念を行動に移しました。たとえそれがどのような結果になろうとも。夫が逮捕された後、70歳になる夫の母親は相当なショックを受けていました。




 夫はどのような結果になるかわかっていたと思います。チベット人に中国の政策に関するインタビューを行い映画化すること、それも中国領チベットで行うことがどれほど危険であるかは認識していたと思います。しかし、夫は家族を置いたまま、思いを行動に移しました。インタビューを行う方が大事だと考えたのです。そしてこの映画を製作したがために夫は懲役6年の刑を受けたのです。




 みなさんに質問があります。あなたの国では一般市民にインタビューをして映画化することで懲役6年の刑に処されるということがあるのでしょうか?




 夫の映画の中で紹介されているのは、ダライ・ラマ法王に対する思いをはじめとして、チベット人がごく一般的に感じていることです。それにも関わらず、夫は有罪になりました。いかにチベットに自由がないかということがわかっていただけたと思います。




 夫が逮捕された後、裁判にあたって協力を申し出てくれた中国人の弁護士が2人いました。しかし、彼らが弁護することは政府により禁じられました。中国領チベットでは、昔からチベット人の裁判で弁護士がつくことはありません。特に政治犯の場合はそうです。夫の裁判の日程は家族にすら知らされませんでした。裁判は非公開で行われ、刑が言い渡されたのです。




 夫は獄中でB型肝炎を患いました。普通の国であれば、治療が受けられると思います。しかし、夫は治療を受けることができません。政治犯はたいていそうです。夫の健康状態が心配でなりません。




 夫は病を患っており、刑期は6年もあります。とても楽観的な気持ちにはなれません。夫が中国の劣悪な刑務所の中で無事でいられるか心配でなりません。政治犯の刑務所内の環境は特にひどいです。私は世界中の人々に対して声を上げていきます。みなさんに他人事だと思ってほしくないのです。このような状況を知って、考えて、行動してほしいのです。私は、夫が1日も早く無事釈放されることを願わない日はありません。




 私のように夫の刑務所からの帰還を待つ女性はチベットに何千人もいます。息子の帰りを待つ親もいます。こうした人々を代表して、本日私の話を聞いていただいたことに深く感謝します。(ラモさん涙を流す)




 私の使命は多くの人に私の夫の話をすることです。毎日、夫のことを思い出すこと、そして夫の話をすることがどれほど辛いか、おわかりいただけるでしょうか?しかし、それでも、獄中にいる数千人のチベット人のために、私は語り続けます。


 この映画は教育を受けたこともない夫が撮影したものです。教育を受けた皆さんなら、チベットのためにきっと夫以上のことをしてくださると信じています。




 今日は私の夫の映画を見てくださり、また、私の話を聞いてくださり、ありがとうございました。


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なお、ドンドゥプ・ワンチェン氏の釈放を求めるには、例えば以下の方法があります。

http://www.amnestyusa.org/actioncenter/actions/uaa18909.pdf