妻を帽子とまちがえた男を読みました | 女医の国際精神保健

女医の国際精神保健

精神保健および公衆衛生を軸に、韓国、ロンドン、ジュネーブ、ニース、フィジー、赤道ギニア、東京、インド。
他にも、旅行、馬術、音楽、写真などについて記載しています。

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)/オリヴァー サックス
¥924
Amazon.co.jp

「妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする音楽家、からだの感覚を失って姿勢が保てなくなってしまった若い母親、オルゴールのように懐かしい音楽が聞こえ続 ける老婦人―脳神経科医のサックス博士が出会った奇妙でふしぎな症状を抱える患者たちは、その障害にもかかわらず、人間として精いっぱいに生きていく。そ んな患者たちの豊かな世界を愛情こめて描きあげた、24篇の驚きと感動の医学エッセイの傑作」

「病気について語ること、それは人間について語ることだ―。妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする男。日々青春のただなかに生きる90歳のおばあさん。記 憶が25年まえにぴたりと止まった船乗り。頭がオルゴールになった女性…。脳神経に障害をもち、不思議な症状があらわれる患者たち。正常な機能をこわされ ても、かれらは人間としてのアイデンティティをとりもどそうと生きている。心の質は少しも損なわれることがない。24人の患者たち一人一人の豊かな世界に 深くふみこみ、世界の読書界に大きな衝撃をあたえた優れたメディカル・エッセイ。」


実は原著をNYですんご~い昔に購入したのでした。
(格好よい店員さんに「変わった題名だねえ~」と言われたの覚えています。そして、その隣にいた店員さん(格好よかったかは忘れちゃった。。)には、「日本人?オレ、友達訪ねて越後湯沢行ったことあるゼ!」って)
まったく読まないままでロンドンに持って行き、そのまま本棚にいました。
いろんな人が話題にしていましたし、薦めていた本です。
でも、読書モードでなかった私は数ページを読んだことがあるかどうか?の状態。
友人が「お!これ!読みたい!」
と大興奮でしたので、譲ってしまいました。

で、今回、祖父の本棚から出て来たと日本語訳版を父がくれました。
「神経心理学」 とよばれる分野の症例の紹介と、その解釈が記載されています。
私が医学生の頃に正に興味を持っていた分野。
それゆえ、精神科、神経内科、脳外科などで専攻を悩んだのでした。
その中で、作者の先生は神経内科の領域で、私は精神科の領域なのだと思います。

「逆境のなかで自己のアイデンティティを守り抜こうとする個人が医療者にとっての問題」
と指摘する筆者は、知識、経験、人間としての深みのあらゆるものを総動員して患者を診察し、解決策を探します。

「混沌からの復旧:手段や結果がどんなに奇妙であろうとアイデンティティを守り抜こうとする努力」
などの指摘も筆者が心底「臨床家」であることを示す一説です。

さすが臨床医!とうなりたくなる、観察、診断、治療、解決策、患者医師関係、がストーリーになって、いろんなパターンがでてきます。
臨床医として、このレベルに達することができたら素晴らしいですね。
学びたい。

医療者が読んでも興味深い、非医療者が読んでも興味深い内容です。