「代替療法ホメオパシー利用者、複数死亡例 通常医療拒む」
http://www.asahi.com/national/update/0810/TKY201008100476.html

ここ1~2年、日本でもホメオパシー関連のこういったニュースが散見されます。


例えば7月にもこんな記事が・・・


「「ビタミンK与えず乳児死亡」母親が助産師提訴」

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=27819


(この助産師が所属する団体は「日本ホメオパシー医学協会=RAH(ロイヤルアカデミーオブホメオパシー)」であり、錠剤というのはホメオパシーで使うレメディーのこと)


ここで、ホメオパシーをはじめとした代替補完医療の在り方を私なりに再考したいと思います。

以前の私のブログでも取り上げましたが、代替補完医療を医学の素人が勝手に解釈してそれだけにはまるのはとても危険なことです。特に命に関わる疾患・病態のときには。

今、日本は空前の健康・美容ブームです。それにアンチエイジングというキーワードが拍車をかけているのも確か。

私がブログを書き始めた2004年頃は、“アンチエイジング”はまだそれほど一般的ではありませんでしたが、今や、アンチエイジング関連のブログ記事はそれこそ星の数ほどあります。

医療を語る上で、元々が健康人、半健康人くらいを相手にしているのであれば、それはそれほど大きな問題にはなりません。

「水は2リットル以上飲め」だとか、「体を冷す食材を摂らないように」だとか、「アンチエイジングのためにCoQ10を摂るように」などというまぁ、“アンチエイジングにいい”的なことがあちらこちらで書かれていますが、そこそこの健康体であればそれをやったやらないで命を落とすようなことはまずないので、にわかアンチエイジングアドバイザーさんもたくさん“らしい”ことを書けるわけです。


実際そういった事柄で医学的にエビデンスの取れているものはほとんどないので、読んだ人を「なるほど、そうなんだぁ~」と思わせたらそれまで。


最新の日本抗加齢医学会雑誌『アンチ・エイジング医学』の2010.Vol.6No.4号の中で、秋元康さんの連載記事「アンチエイジングという名の哲学」の中で、こんなことが書かれています。


“世の中にはなんとニセ医者が多いことか!と言っても、医師を装ったニセ医者ではなく、聞きかじりの情報を持った一般人のニセ医者のことである。”


記事の内容はこのあと、このようなにわか健康・美容オタクの存在を決して否定しているわけではなく、アンチエイジングを世間一般が大いに語り合う上では悪いことではないと言っています。


より多くの人々に、健康や美容のことに大いに興味を持ってもらい、結果、国民の健康長寿に結びついていくのであれば、“ニセ医者”の跋扈もまたそれはそれでいいと、私も思います。


しかし、問題は医学の本質を知らない(学んでいない)人が、代替補完医療の都合のいいところだけをひっぱってきて、なんとなくもっともらしい科学的(医学的)自説を吹聴し、ど素人の患者さんをその道に引きずり込んでしまうこと。これは看過できないことです。

実際、それで命を落とす事例がこうして頻繁に起こるようになれば、厚生労働省も黙っていないでしょう(まぁ、現民主党政権下での医療政策も、とんでもなく寝ぼけたところで右往左往しているのが現実ですが)。

代替補完医療の信奉者は、現代西洋医学を否定するスタンス(「ステロイドは絶対ダメ」、「抗がん剤などとんでもない」等)でものを言う傾向が多いのもまた、事実。。。

現代西洋医学は検査至上主義、データ(エビデンス)至上主義、薬漬け医療などと揶揄されています。今の日本の保健医療は確かに多くの問題を内包しています。医師がその中心にいることもこれまた事実です。


現代西洋医学を学んだ私たち医師は、巷の代替補完医療至上主義の治療家の方々よりも、はるかの現代西洋医学の限界に気付いていますし、自分たち医師の無力さに気付いてもいます。


なぜなら、医師免許を与えられた我々は、多くの患者さんの死を目の前にして、自分あるいは医学の非力さを痛いほど痛感させられるのです。


人の死に真剣に直面し、死亡宣告をする・・・我々医師が、他の治療家といわれる人々と決定的に違うのはここなのです。


代替補完医療すべてを否定するわけでは決してありません。


現代西洋医学をきちんと上手に受ければ、命を落とさないですむケースにおいて、盲目的にホメオパシーを信じてそれ以外の全うな医療を拒絶するようなことはあってはなりません。


要はバランス。そして代替補完医療を理解していて(必ずしもそれを行っているひつようはない)的確なアドバイスをしてくれる医師免許を持った良心的な医師がもっと増えること。


ホメオパシーの本場ともいわれている英国でも今年の2月にこのような記事が・・・


「英国議会は“NHSでホメオパシーはもう扱わない”という」

http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2010/02/-end-homeopathy-on-nhs-say-briti.html?etoc


“英国下院科学技術委員会は本日発表した報告書で、ホメオパシーはただのプラセボであり、NHSで提供されるべきではない、と結論した(1948年からNHSでホメオパシーを扱っている)。さらに委員会は医薬品安全性担当機関であるMHRAに対し、無作為対照化試験で有効性が示されていないホメオパシー医薬品の薬局での販売承認を中止すべきであると助言した。この結論は驚くべきことではない。委員会はさらに「ホメオパシーは十分な試験が行われており、ホメオパシーには効果がないというたくさんの根拠がある」と結論してさらなる研究の要請も否定した。”


ホメオパシーは科学の分野においては、完全にその効果を否定されています。


まぁ、人間の生命現象において、科学がすべてではないと、私も思ってはいますが…


ホメオパシー、実際、わが家では子どものちょっとした腹痛、頭痛なんかには使っています。


ハイ。よく効きます(笑)