昨日の記事の続きになります。


アンチエイジングとがん…?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが。。。


抗加齢医学としてのアンチエイジングが具体的な医療の上でのストラテジーとしているのは以下の4つ。


1.錆びない体を維持する(抗酸化)

2.枯れない体を維持する(成長ホルモン、性ホルモンなどを枯らさない)

3.メタボにならない(動脈硬化を予防)

4.自律神経を鍛え、免疫力を高く保ち病気(がん、感染症など)にならない


本ブログでも再三言ってることですね。


そう。医学としてのアンチエイジングは、単なる“若返り”の美容・健康法ではありません。抗加齢医学の定義は、『健康長寿のための理論的・実践的科学』なのです。


健康長寿を著しく阻害する“がん”を何とかしないと真のアンチエイジング医療は、完成しません。


私は、2000年からアンチエイジング医学を本格的に自分の専門としてやってきましたが、2007年までに抗酸化、ホルモン補充、アンチ・メタボという1.~3.の抗加齢医療の臨床は一通りやり終えました。


2008年7月からは新しく、がん専門の免疫療法クリニックを横浜に立ち上げ、日々の診療を行っています。自律神経と免疫に特化したクリニックです。


現状の日本の保険医療下では、がんの治療は基本的に、3種類しか受けられません。三大療法(標準治療)ともいわれている「手術療法」、「化学療法(抗がん剤、ホルモン剤など)」、「放射線療法」です。


三大療法は言いかえるると“攻撃型がん治療”ともいえます。どれも、がんそのものをターゲットにして、出来るだけ小さくしようという目的の上に立つ治療法です。あわよくば、がんを無くしてしまいたいというわけです。


これらの治療法(特に抗がん剤)の共通した特徴は、両刃の剣であること。


大きな手術であればあるほど、摘出される正常組織部分も多くなり、生体はかなり大きな侵襲を受け、体力や正常な生理的環境を損ない、免疫力はこの時低下します。


抗がん剤の副作用のひとつに「骨髄抑制」があります。血液細胞を造る骨髄が抗がん剤に副次的に攻撃され、ダメージを受けます。骨髄で白血球が作られなくなると免疫が低下します。赤血球が作られなくなれば、貧血に。血小板がやられれば、血が止まりにくくなります。


放射線も最近では昔よりはかなりマシになりましたが、無視できない副作用があります(抗がん剤同様、骨髄抑制もあり免疫力は下がるのが普通)。


三大療法(攻撃型癌治療)でがんは小さく出来たが、同時に免疫力がボロボロになり、残存がん細胞に容易に転移を許してしまう・・・こういったジレンマに陥ることが不可避なのです。


以前のブログでも紹介した新潟大学大学院の安保徹教授は、がんになってしまった患者さんに対して、4つの提言をされています。


1.生活パターンを見直す

2.がんの恐怖から逃れる

3.体が消耗する三大療法(手術・抗がん剤・放射線)を受けない

4.副交感神経を優位にして免疫力を高める


こうまで言い切ってしまうのはスゴイ。。。しかし、免疫を下げないようにしてがんと対峙することはこれもとても大切なポイントなのです。


攻撃型がん治療に対して、最近、注目されていきているのが“防御型癌治療”。この代表が第四のがん治療法ともいわれる免疫療法なのです。


「疫から免れる」と書いて、免疫。細菌やウィルスなどの外敵病原体に対してのみならず、身内のならず者細胞であるがん細胞に対しても免疫パトロール部隊は、その力を発揮してくれています。これをがん免疫といいます。


免疫力は若い時には高く、加齢と共に減弱していくことも知られています。だから、若い人にはがんは少なく、50歳を超える頃からがん患者さんは増えていくわけです。がんはエイジングとも強く関連する疾患なのです。


免疫力を高めてがんに悪さをさせないようにコントロールしようというのが、防御型がん治療の目指すところです。がん細胞の撲滅を狙っているのではなく、がんとの共存を目指します。


今までは、がん=不治の病、罹ったら最後、そう長くはない先に死んでしまうと考えられていました。がんを撲滅させないことには、最終的には命を取られていしまうと。


最近では、ある意味、がんも生活習慣病のひとつであり、高血圧や糖尿病と同じように、コントロールして共存していく病気であると考えられてきています(一部の悪性疾患は違う)。


高血圧も糖尿病も治りません。でも、血圧をコントロールすれば、血糖値をコントロールできれば、長寿も可能です。これぞ、まさに、病気との共存です。


がんも共存の時代。転移しないように、再発しないように、コントロールしつつ、共存。共存するためには、副作用が強い治療法はNGですね。体に優しくなくっちゃ。


まずは、免疫細胞療法のような現代西洋医学的な免疫療法で防御を上げる。免疫細胞療法とは、自分の血液中のリンパ球という免疫を担当する細胞だけを培養して増やし(特にがんをやっつけるパワーのあるNK細胞などを選択的に増やしてあげる)、それをまた点滴注射で体内に戻してあげるとそのリンパ球軍団ががんをやっつけるというメカニズムの治療法です。


この治療法の利点のひとつは、ほとんど副作用がない、体に優しいがん治療であるということ。QOLを下げずにがんと共存できる可能性が高まります。また、抗がん剤による副作用である骨髄抑制による免疫力低下を補てんします。


まだ、日本においては医学的に確立されたものとしてはされておらず、がんの代替補完医療として位置づけされていますが、最近ではこの治療法を取り扱う医療機関が日本国内でもものすごい勢いで増えてきています。昨日のニュースで話題になっていたのは、このがんをやっつける力のあるNK-T細胞という免疫細胞をiPS細胞から大量に作り出してしまうことが可能になるというものでした。


再生医療は実際に臨床応用において、まだまだいくつもの超えなければならないハードルが多くありますが、がん治療の可能性が拡がることはいいことです。


がんの免疫療法がこういったニュースをきっかけにして、もっと多くの患者さんに広まっていくといいですね。