自分がつけてしまった、2本の傷を見ると、思い出す。




ただ、ひたすら、カズの名前を呼び続けるしかできなかった、あの時。

自分の名前を呼ばれる時の、声の優しさ。

どこにも、行かないで、いつでもそばにいて欲しい。
言葉にできなくて、腕を掴むしかできなくて。

カズへの愛しさが目から零れて。
吸い取られた、その優しさ。

ともに迎えた、あの時。
制御できなかった、自分の指。
カズに縋りついて。

自分の指先についていた、赤い色。

カズから出るものは、一滴も無駄にしたくなくて。
自分のものにしたくて。

舐めとった血の鉄分の味。



血の味と匂いのする・・キス。