こんなことを言われた。
「ホラー映画は精神に悪影響をもたらす」
発言者は心理学を勉強しているわけでも何でもなし。
ホラー映画における残酷描写と、
ネット上のイタズラなどで目にしてしまうグロ画像を、
同列視しているよう。
非常に短絡的で無責任な意見だと思う。
無数に存在し、増え続けるホラー映画。
レンタル店に並ぶ商品の中には、
ごくごく一部、
理不尽な拷問や殺人などの犯罪行為を見せ続けるだけの、
映画と呼べない代物も確かに存在する。
私もその類いは大嫌いで、
そんなものを「ホラー映画」とは認めない。
ホラー映画とはファンタスティックなものだと思う。
アートと見るのも正しいし、
単なる娯楽と見るのも正しい。
その中で必然的に描かれるグロは、
人々に娯楽を提供するために作り上げられた、
アートである。
現実世界では目にすることの無い、刺激的な驚くべき映像。
それらは演出家を始めとする製作スタッフ、
特に特殊メークアップ・アーティストら
特殊効果マン達の技術とセンスと情熱に裏打ちされた、
マジックである。
グロ画像などと一緒にされてはたまらん。
残酷シーンを含むホラー映画が、
観客の精神を蝕ばみ、犯罪を誘発する、
などという考えはあまりにも短絡的で、古臭い。
ホラー映画の残酷シーンを見て精神を病み、
映画と同様の犯罪を引き起こす者がいるとすれば、
それは作品ではなく、受け手側自身に大きな問題がある。
そういう人間は何を見ても、
結局は犯罪行為に走ってしまうのではないか?
実際ホラー映画だけでなく、
テレビのドラマやアニメにだって暴力や残酷は溢れている。
子供が見ている時間帯のドラマの中で、
女性がレイプされたりする。
サスペンスドラマや刑事ドラマでも人は理不尽に殺され、
血が流れる。
時代劇のヒーローだって見方を変えれば、
毎回鋭利な刃物で大量虐殺をしている。
流行りのお笑いだって、
いじめや暴力とも受け取れる要素を含む。
なのになぜホラー映画の残酷だけを問題視するのだろう?
ホラー映画を「精神に悪影響を及ぼす」として規制するのなら、
そういった番組での表現も全て規制すべきか?
そんなことしたらテレビ番組はみんな、
教育テレビの「おかあさんといっしょ」
みたいになってしまうんじゃない?
みんなでぐ~チョコランタン見る?
(ぐ~チョコランタン批判じゃないよ)
「サンゲリア」を観て、
「よし、俺も人肉喰って、はらわたを引きずり出してやる!」
なんて思う奴、いない。
いたらそいつ自身にもともと問題がある。
映画やテレビ番組での表現としての暴力や残酷。
その影響で簡単に犯罪に走る人間など作らない教育こそ重要。
まだ幼い子供達に対しては、
残酷描写を含む作品を目に触れさせないよう、
各家庭で注意を払えば良い。
それが保護者の務め。
この問題について、
ゾンビ映画の神、
ジョージ・A・ロメロ御大が以前発言していた。
細かい表現はうろ覚えだが、要旨は以下の通り。
「映画における残酷描写は実際の残虐行為を誘発したりしない。
むしろそういった欲求の解消に役立っている。
観客は作り事であることをちゃんと理解して楽しんでいる」
人間は誰しも、多少の残虐性、暴力性を心のどこかに秘めている。
ホラー映画で安全な暴力と残酷を楽しめる人は、
少なくとも
現実とフィクションの区別もつかない危険な人間ではないと思う。
要するに何が言いたいのかというと、
ホラー映画が精神を病むのではない。
ホラー映画から犯罪へ走る者の精神は、
もともと病んでいるのだ。
そういう人物に見せるのなら、
「ROOKIES」や「恋空」ですら、危険である。
あまりにも短絡的なホラー批判はやめて欲しいものである。
しかも冒頭の発言者は、
映画製作についての教育を受けた経験のある人物。
映画における表現の自由について
もっと深く考えた上で発言して欲しい。
(以下、感情的になり過ぎたので、一部削除しました。 10/24)