「シナリオ修正地獄1」
大きな決意の上で書き上げた、
夢のゾンビ映画シナリオ第一稿。
その完全無欠(なはず)の自信作を、
あちらこちら加筆、修正、削除した上で送り返してくれたのは、
共同製作者の田中君(仮名)。
「気づいた事は遠慮なく言って」
と言ったのは私だが、
けっこう遠慮なくいじられてしまった。
作品のために善かれと思っての修正案なのは判るのだが・・・
引っ掛かったのは、
彼自身の趣味により改変されている部分。
「無口な女性が好きだからヒロインにあまりしゃべらせるな」
はどうしても納得出来ない。
私は読み終えた添削だらけの原稿を投げ出すと、
モヤモヤとした気分のまま、
しばらくの間自室のベッドの上に座り込んでいた。
そして横になり、考えた。
自分のやりたいことを存分にやろうと企画したゾンビ映画。
妥協することなく、本当に撮りたい作品を撮るため、
多くの代償を支払う覚悟も決めた。
その上で書き上げた第一稿。
「より良くするため」の修正であっても、
それはあくまでも他人の主観による「良い」。
自分にとっての「良い」を優先させなきゃ意味が無い。
今回私はシナリオを書くに当たり、
ドラマの背景を綿密に設定していた。
登場人物各々のそれまでの人生を想像し性格を設定、
それに基づいて人物に行動させた。
これらは原案の段階では全く考えなかったことである。
当然ながら田中君の修正案では、
この辺の裏事情は考慮されていない。
またこの企画、
原案段階では「コミカルなホラー」というだけの内容だった。
私はそれに加えて、
日本の古いB級怪談映画に見られるような、
陰湿で不気味な要素を随所に盛り込みたいと考えた。
それも原案段階のコンセプトとは異なるので、
田中君の構想には無い。
意見が食い違うのも当然か。
私は共同製作者の修正案をどう扱うべきか、
自分の中での指針を定めることにした。
まず私のコンセプトにそぐわないアイディアは申し訳無いけど却下。
良いと思ったアイディアも、
取り入れて支障がないかよく吟味する。
私の案と彼の案、どちらでも良さそうな場合は、
自分の意見を優先させる。
以上を踏まえたうえで添削済みのシナリオを読み返してみる・・・・・
う・・・・・・・・・・
いかん、
ほとんどの修正案が却下だ。
映画に「正解」「不正解」なんてあって無いようなもんだからなあ。
どちらが良い悪いという問題ではなく、
自分の意見こそ正解に思えるに決まっている。
でも協力者の意見を無視することはできない。
彼の意見も立てて修正案を一部受け入れるべきか。
でもほんとにそれでいいのかな?
そんなことする必要あるのかな?
う~ん・・・・・・・・・・
悩んだ末、自分の責任において直した、と思える範囲内で、
いくつかの意見を参考にさせてもらった。
これ以上は変えられない。
まあ、これで決定稿に出来るだろう、
私はそう踏んでいたのだが・・・・・