ゾンビ映画製作回想録 第7回 | 地獄のゾンビ劇場 ~ZOMBIE THEATER~

地獄のゾンビ劇場 ~ZOMBIE THEATER~

「地獄の血みどろマッスルビルダー」監督・深沢真一によるホラー映画雑学&雑談ブログ!

「スケジュールが合わない!」

 

空家を舞台にしたゾンビ映画。
物語のアウトラインが決まっても、
私はシノプシスを書き出せずにいた。
シノプシスとはストーリーを細部まで具体的に書き記した、
脚本の前段階のようなもの。

 

実はこの企画、
友人の田中君(仮名)に協力を依頼した時点で、
ある現実的な問題が発生していた。
二人のスケジュールが全く合わないのだ。


私の休日はごく普通に土日祝だったが、
当時ブライダル撮影の仕事をしていた田中君は、
平日しか休めなかった。
その代わり、結婚式の数が激減する7、8月に、
まとめて長期休暇が取れるとのことだったが、
残念ながらロケ地となる空家は、
翌年7月に取り壊してしまう予定。

 

私が彼の休日に合わせて有給休暇を取るしかなかったが、
日数は限られる。
年内に準備を終え、年明けから撮影を開始したとして、
せいぜい5~6日といったところか。

そこに他のスタッフ、キャストのスケジュールも絡んでくる。

 

人員の確保に関して田中君は、
「俺の方では一人も集められん!」
と何故だかやけにキッパリと言い切っていたので、
人事は私の役割となっていた。

 

私には高校時代から
役者兼スタッフとして協力してくれていた仲間が数人いたので、
彼らに声をかけるつもりだった。
でも考えてみればみんな普通の会社員や公務員。
平日の参加は難しそう。

 

企画会議の度に話ばかりが盛り上がり、
「日本一のスプラッター・ゾンビ映画を撮るのだ!」
「そうなのだ!日本映画界に衝撃を与える大傑作なのだ!」

などと大騒ぎしていたが、
こりゃどう考えてみても企画を縮小するしかない。

 

ある平日の午後、

私は有給休暇を使い、

田中君が製作した短編8ミリ映画のアフレコのため、

彼の自宅を訪れた。

 

作業が無事終了すると、私は彼に提案した。
「なあ、やっぱり当初俺が考えてた通り、
ビデオ撮りの短編にしようよ。
出演者も3人くらいに絞ってさ」

 

ビデオなら照明などもフィルムよりずっと楽だし、
その場で上がりをチェックできるから、
後からリテークが出ることも無い。
特殊効果は完全別撮りにして、
土日に私が他のスタッフと撮ればよい。

 

「いや、どうせやるなら1時間、
最低でも30分以上のフィルム作品にしよう!」

 

田中君は従来の主張を崩さなかった。

私はかなり細かくカットを割る方である。
30~40分と仮定して、
500~600カットといったとこか。
だとすると・・・・・・
な~んだ、一日100カット撮ればいいんだ。

 

・・・・・・・・・・

 

絶対無理です。

 

そもそも今回のゾンビ映画企画で、
私がどうしてもやりたかった事は何か?
私は頭の中で整理してみた。

 

・ まず、私がブルース・キャンベルとなって、筋肉を誇示しつつ派手に格好良く暴れまくること。
  (↑必須)

・ 今まで結構いい加減にやってきた特殊効果を頑張ること。
・ 見せ場がギッシリ満載の密度の高い作品に仕上げること。

 

限られた撮影日数でこれらの条件を満たすには、
やはり上映時間を短くするしかない。
器を小さくして密度を上げるのだ。

 

「あなたには平日しかお休みがありません」
「はい」
「でも大丈夫です。私が有給休暇を取りますので」
「それはなにより」
「撮影日数は5日か6日といったところでしょうか」
「はい」
「では、20分くらいのビデオ作品ということで」

「いや、30分以上のフィルム作品でしょう」

 

え~と・・・・・・・・・・

アプローチを変えてみる。

 

「今回は日本一を目指してるんでしたよね」
「ええ」
「じゃあ、見せ場がギッシリ詰まった作品にしたいですね」
「したいですねえ」
「撮影日数は5~6日」
「はい」
「では、20分くらいのビデオ作品ということで」

「いや、30分以上のフィルム作品でしょう」

 

えーと・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

 

こんなような頭の悪い会話が、
実際に延々と繰り返された。

そんな少ない日数で
どうすればフィルムの大作など撮れるというのだろう?

 

その質問に田中君は決して答えようとせず、
「ならば逆に聞くが、

短編のビデオなどわざわざ作る必要があるのか?

我々2人手を組んでまで」
と私に問いかけてくる。

 

え~と、それは・・・・・
うーん、何と答えたものか?

 

・・・・・・・・・・・

て、なんで私が答えに窮せねばならんのだ!

 

そもそも土日祝は一切休めず、
その代わり7、8月は学生並みに夏休み、
なんて方が特殊なんじゃないの?

 

日数が少ないんだから短い作品。

私の言ってること、多分おかしくない。
私、多分間違ってない。

 

そうですよねえ?

 

※後年この作品として完成↓(2021年5月追記)

 

 


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