「エンドレス企画会議」
父が所有する一軒家で撮影することになったゾンビ映画。
当初、私はビデオ撮りで予算は10万円前後、
20分程度の作品を考えていた。
協力してくれることになった友人田中君(仮名)は、
「どうせやるなら1時間か、最低でも40分以上の作品、
フィルム撮りでいこう」
と主張した。
当時の私は、すでにビデオで作品を製作するようになっており、
映画はフィルムでなくちゃダメ、
というようなこだわりは持たなくなっていた。
しかし田中君は、フィルムで映写、
という方法にまだこだわりたい様子だった。
ビデオとフィルムでは手間と金のかかり方が全く違う。
私は即答を避けた。
その後、私と田中君は
何度もこの企画についてディスカッションを重ねた。
場所は主に私の自宅近くのファミレスだった。
一応、企画会議という名目だった。
私の企画は、
「マッチョな主人公の私が、一軒家の中でゾンビと戦う」
という程度のラフなものだったので、
具体的に決めなければならない事は山積みだった。
が、実際には連日連夜楽しいおしゃべりに終始していた。
これから作る作品では、
どれだけ主人公が派手に暴れ回るのか、
どれだけ凄いシーンの連続になるのか、
まだ脚本すらない映画の見せ場を二人で夢想しては盛り上がり、
将来の大成功に祝杯を揚げていた。
何度目かの会合で、
「ひょっとして、ちっとも前進していないのでは?」
ということに気付き、
「今日中にストーリーのアウトラインだけでも決めてしまおう!」
ということになった。
「まず、どうして死人が甦るのか、だ」
と私が切り出した。
「う~ん」
「例えば、化学薬品とか。
ロケに使う一軒家の隣はちょうど墓地なんだ。
溢れ出した化学薬品の影響で死人が・・・・・」
「お、バタリアンか。それでいいんじゃないか?」
「ただ、今、日本で土葬ってあるのかな」
「う~ん・・・・・」
「う~ん・・・・・」
・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
「ま、とにかく凄い場面の連続にしようぜ」
「そうだな。主人公がこんな武器でこんな風に派手に戦って~」
「でもってゾンビがまた凄くて~」
「よし!日本一のスプラッター映画に乾杯!」
現実逃避は続いた。
※この夢の企画は後にこの映画として結実!(2021年5月追記)
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