回復力~失敗からの復活 (講談社現代新書)/畑村 洋太郎
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失敗学の第一人者である著者の2009年最新作。
「失敗」というネガティブな事柄について、ポジティブに、かつアグレッシブに捉え、
「失敗する前」「失敗したとき」「失敗した後」の失敗の前後
失敗に関与する人「自分」「他人」
の2軸から失敗という出来事を多面的にまとめている。
ナレッジマネジメントが流行りだしてから数年経過しているが、それをしっかりと導入し、運営している団体は数少ない。
それはやはり、そのナレッジそのものの起因としている状況が、それを利用している状況と酷似していないからである。
ナレッジを生かすには、ナレッジそのものが生み出された考え方やアプローチが必要なのだと評者は思う。
そういう意味で、本書の第8章にあるように、
「失敗したときその人に必要なのは、辛さを乗り越えるために本当に必要なのは、そのものと正対して生きていくエネルギーを作り出すための考え方です」
というのは的を得た、失敗に対する挑戦の方法論の重要なひとつだろう。
■目次
はじめに
第1章 人は誰でもうつになる
第2章 失敗で自分が潰れないために大切なこと
第3章 失敗したら誰の身にも起こること
第4章 失敗後の対処
第5章 失敗に負けない人になる
第6章 失敗の準備をしよう
第7章 失敗も時代とともに変わる
第8章 周りが失敗したとき
■本書の目的
失敗学を通じていろいろな失敗を見てきた著者が、失敗した当事者がどのように失敗と付き合っていけばよいのか、どうすれば復活することができるのか、そのコツをさまざまなエピソードで紹介するというのがテーマ
■詳細■
<はじめに>
・失敗とは、人の行動や選択の結果、その人や周囲の人の意図しない、望まない結果になること
・人は必ずしも、大きな失敗からすぐに立ち直れるほど強くはない
<第1章 人は誰でもうつになる>
・自殺をはかった学生の大半はうつ病を患っていたようです。
・同じ精神病でも統合失調症とうつ病はまったく違う
・うつというのはすべての人間が持っている性格だと思いなさい
・うつ状態に至る代表的なパターンは3つ。「目標喪失」「越えられない高い壁」「先が見えない」
・精神的にまいっているときは、ただ一方的に話す。
・1969年にスタートした日本の宇宙開発事業は、アメリカの1/10程度の予算で進められている
・山之内さんをここまで追い込んだのは、宇宙開発事業に対する周囲の無理解が原因
・人は誰でも失敗するし、誰でもうつなどの精神的ダメージを受ける可能性があるという認識が必要。
・大きな失敗をした人に対しては、精神的なケアを含む周囲のサポートが重要
<第2章 失敗で自分が潰れないために大切なこと>
・人は弱い
・自滅パターンにはまり込んだ人には、「人は弱い」という認識が欠けている
・本人は気づかないかもしれないが、失敗直後はエネルギーが漏れてガス欠状態になっている
・失敗したときは、エネルギーが回復するまでひたすら「待つ」こと
・「最初から失敗を想定して行動する」というのは、非常に大切な考えである
・失敗と向き合い、無理して自分を鼓舞し続けるのは、自滅の方向に追い込んでいるのと同じ
・失敗した人に向かって、よく「もっと頑張れ」と声をかけることは、相手には励ましどころか大変な苦痛になっている
・エネルギーを失ったときには、人は失敗に立ち向かうことはできない
・失敗からできるだけ早く回復するには、失われたエネルギーをいかに上手に早く溜めるかが大切になる
・エネルギーが戻ってくると人は必ず自発的に行動したくなる
・頭の中で自己否定を繰り返しているうちは、建設的な考えは絶対に生まれてこない
・本音で話をすることが、その人にとって心が休まる状態になっており、心地よい状態に置けたことで、エネルギーの回復が促されている
・失敗したときの対処法
1.逃げる
2.他人のせいにする
3.おいしいものを食べる
4.お酒を飲む
5.眠る
6.気晴らしをする
7.愚痴を言う
<第3章 失敗したら誰の身にも起こること>
・失敗とは、「想定外」のこと
・想定外のほとんどは、そんなことが起こるということを計算に入れていなかった
・敏感で感度がよすぎる人は、ほんの些細な失敗でくじけてしまう危険がある
・一般的には、柔軟さがなく、社会をきちんと観察していない人ほど正論を好む
・たいへんな状況のときに、いつも心がけていたのが、自分ができる最善の策をただ淡々とやり続けること
<第4章 失敗後の対処>
・そもそも人は失敗した「事実」すら素直に認めたがらない
・失敗を失敗と認めないうちは、そこで何が起こっているかを正しく理解できない
・失敗の評価の方法は、大きく分けて「自分の評価」「他人の評価」の2種類。
・自分の評価は過小評価になりやすく、他人の評価は過大評価になりやすい
・ぶれることのない「絶対基準」があると、正しい失敗の評価が行える
・人というものは、その場の空気やそのときどきの雰囲気に左右されやすいものなので、評価の軸としては適していない
・失敗を評価する4つの視点「物理的視点」「経済的視点」「社会的視点」「倫理的視点」
・失敗後の対処は、"損得勘定"をしてから行えばいい
・私自身は失敗を「隠す」ことに関してそれほど否定的ではない
・隠すときは、「隠した事実について正確に把握していること」「潔さをもつこと」
・失敗についてオープンにしたことを素直に褒めるような文化を、社会や会社の中に作ること
・クライシス・コミュニケーション
<第5章 失敗に負けない人になる>
・周りからの責任追及に決してつぶされないこと
・失敗したとき、自分がやっていることに自信をもつこと
・楽観的な自信は、失敗を乗り越える大きな原動力になる
・失敗を前にして自分が「どのようなことを考え」「どのように決断し」「どのような行動をとったのか」を後々しっかり覚えておく
・誰かに悩みを打ち明けることには辛さを移す効果がある
<第6章 失敗の準備をしよう>
・失敗のシナリオや対策の導き方として「逆演算」「仮想演習」がある
<第7章 失敗も時代とともに変わる>
・「社会は変わるものだ」ということを、常に意識しているかどうか
・失敗した人が正確な情報発信を行うかは重要な問題
・工学の世界における「コンプライアンス」は、剛性の逆数のことを指している
・マニュアルを使うときには、環境などの制約条件の変化によって、マニュアルが当初の目的を果たせなくなっていないかどうかを常に検証する必要がある
・こうした時代に必要なのは、仮説を立てたり自分の経験を通じて考えをつくっていく能力
<第8章 周りが失敗したとき>
・相手の辛さの一部を自分が引き受ける。それは話をただひたすら聞くだけでよい
・失敗の責任はあなたではないと宣言し、時期がきたら再度チャンスを与えること
・失敗下人とは別の誰かが失敗の後始末を行うのは、必ずしも悪いことではない
・人が生きていく中で、辛いこと、理不尽と感じることに遭遇する場面も出てくるでしょう。でもそれでも人は生きていくのです。
・失敗したときその人に必要なのは、辛さを乗り越えるために本当に必要なのは、そのものと正対して生きていくエネルギーを作り出すための考え方です
回復力~失敗からの復活 (講談社現代新書)/畑村 洋太郎
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